2022.06.26

01 事実、筋トレは人生を変える


事実、筋トレは人生を変える

「筋トレを始めた人は人生が変わる」——これは決して大げさな表現ではなく、科学的な根拠と多くの実例に裏付けられた事実です。

なぜ、単なる運動であるはずの筋トレが、個人の生き方そのものにまで影響を及ぼすのでしょうか。それは、筋トレが私たちの「身体」と「精神」の両方に、深く、そして強力に作用するからです。

身体的な側面で言えば、体脂肪の減少や筋肉量の増加による外見の変化はもちろんですが、それ以上に重要なのが「**ホルモンバランスの変化**」です。筋トレを行うことで、テストステロン(意欲や決断力に関わる)や成長ホルモン(細胞の修復や代謝促進に関わる)の分泌が促されます。これらは心身の活力を高めるために不可欠なホルモンです。

精神的な側面では、筋トレによって「**脳内物質**」が活性化します。例えば、幸福感をもたらすセロトニン、快感や意欲を生み出すドーパミン、そして脳の神経細胞の成長を促すBDNF(脳由来神経栄養因子)などの分泌が促進されます。これらが組み合わさることで、ストレスが軽減され、自己肯定感が高まり、物事を前向きに捉えられるようになるのです。

私がこのように断言できるのは、パーソナルトレーナーとして、お客様が筋トレを通じて驚くべき変貌を遂げる瞬間を、この目で何度も見てきたからです。特に、私が初めて指名をいただいたお客様の変化は、筋トレが持つ力を象徴するものでした。

単純に見た目が変わっただけではなく、物事に対する考え方や積極性など、マインドも大きく変わっていました。

 

▼外見だけでなく、思考も変わる

そのお客様は、体重80キロの女性でした。
カウンセリングの際、彼女は自分の体型に対する強いコンプレックスを抱えており、自己評価が著しく低い状態でした。最初のころは、他人の目を極端に気にしており、まったく化粧もせず、いつも身体のラインを隠すブカブカのサッカーのユニフォームのような服を着てジムに来ていました。

私たちはまず、彼女のライフスタイルに合わせた無理のないトレーニングプログラムと、栄養バランスの取れた食生活の改善から始めました。

ここで重要なのは、「**運動**」「**栄養**」「**休養**」の3つの歯車を同時に回すことです。特に「栄養」は、体を変える上で運動と同じ、あるいはそれ以上に重要です。彼女には、筋肉の材料となるタンパク質(Protein)、エネルギー源となる脂質(Fat)と炭水化物(Carbohydrate)のバランス、すなわち「**PFCバランス**」の重要性を理解してもらうことから始めました。

単にカロリーを減らすのではなく、体脂肪を減らしながら筋肉を維持・増強するために必要な栄養素を「正しく摂る」ことを徹底しました。特にタンパク質は、筋肉だけでなく、皮膚、髪、爪、さらにはセロトニンやドーパミンといった精神の安定に必要な脳内物質の「材料」にもなります。食生活の改善は、体型だけでなく、メンタルの安定にも直結するのです。

彼女は、この「アドバイスに沿った食生活」と週2回のパーソナルトレーニングを忠実に守りました。
その結果、体は驚くほど素直に反応し、最初の2ヶ月であっという間に70キロになりました。

この初期の急速な体重減少(主に体内の余分な水分やグリコーゲンの減少によるものが多いですが)は、彼女にとって最初の「**成功体験**」となりました。

すると彼女はジムに来るとき、軽く化粧をするようになりました。
これは、心理学でいう「**自己効力感(Self-efficacy)**」が高まり始めた兆候です。「やればできる」という自信が芽生えたことで、それまで諦めていた「美しくあろうとする意欲」が蘇ってきたのです。運動による血流改善で肌のトーンが明るくなったことも、化粧を後押ししたのかもしれません。

でもまだ服は部屋着のままで、ボサボサの髪にキャップをかぶってごまかしていました。変化は始まったばかりでした。

トレーニングは継続され、体脂肪が減り、筋肉のラインが見え始めた60キロになると、ジムに来るときは髪を整えるようになり、キャップをかぶらなくなりました。

さらに体重が50キロ台に突入すると、彼女の変化は加速しました。ジムに来る時の服装が、アイロンのかかったシャツを着て、それまで決して履かなかったスカートをはいてくるようになったのです。

鏡に映る自分の姿が、自分の理想に近づいていく。他者から(おそらく)「痩せたね」「キレイになったね」というポジティブなフィードバックを受け取る。この繰り返しが、彼女の自己認識を根本から書き換えていきました。かつてコンプレックスの象徴であった「身体」が、「**努力の証**」であり「**自信の源**」へと変わったのです。

この段階になると、彼女はもはやトレーナーの指示を待つだけではありませんでした。「こういう風になりたい」「この部位をもっと引き締めたい」と、自ら積極的にトレーニング内容をリクエストするようになっていました。これは、筋トレによって分泌されるドーパミンが「もっと良くなりたい」という意欲を引き出し、行動を強化する「**報酬系**」が正しく機能し始めた証拠です。

そして、目標としていた50キロを切ったとき、彼女はトレーニングウェアに着替える前に、私に満面の笑みでこう言いました。

かわいくなった自分をいろんな人に見てもらいたいから、これから合コンに行きます」

と、笑顔を見せるまでになっていました。


実は、彼女は大学生のときにも合コンに行ったことがあったそうなのですが、
そのときは、太っていたため気後れしてしまい、輪に入れず、せっかく知り合った人とも会話を楽しめなかった、と過去の辛い経験を教えてくれました。

そのトラウマがあったにもかかわらず、彼女は今、自ら「合コンに行く」という行動を選択したのです。

「いい出会いがあるといいな。楽しみ!」とうれしそうに語る彼女を見ていると、私はトレーナーという仕事の枠を超えて、一人の人間が内面から輝きを取り戻す瞬間に立ち会えたことに、心の底から喜びがこみあげてきました。


私が筋トレを始めると人生が変わると言い切れるのは、
彼女のような人がその後も定期的にいたからです。

これは女性に限った話ではありません。男性でも、筋トレによって見た目が大きく変わったことで自信をつけ、人生を好転させた人を何人も知っています。

例えば、営業職の30代男性。当初は猫背で声が小さく、どこか頼りない印象でした。しかし、筋トレ(特に背中や胸、肩のトレーニング)を続けるうちに、まず**姿勢が劇的に改善**しました。背筋が伸び、胸を張る姿勢(パワーポーズとも呼ばれます)は、科学的にも自信を高め、他者に「頼りがい」や「説得力」といった印象を与えることが知られています。

さらに、高強度のトレーニングによって分泌が促される**テストステロン**は、彼の内面にも変化をもたらしました。競争心や決断力が高まり、プレゼンテーションでの声の張りが変わり、商談がうまくいくようになったと報告してくれました。体格が変わり、スーツが似合うようになったことも、彼の自信をさらに後押ししました。

また、筋トレがもたらす「**健康の回復**」が、新しい挑戦への扉を開くケースも多々あります。
筋トレは、生活習慣病の予防・改善に極めて効果的です。筋肉は体内で最も多くの糖(グルコース)を消費する「臓器」であり、筋肉量が増えることで血糖値が安定しやすくなります(糖尿病予防)。また、血流の改善により血圧の安定にも寄与します。

40代のデスクワーカーの男性は、健康診断で「予備軍」と宣告されたことをきっかけに筋トレを始めました。数ヶ月後、彼は数値の改善だけでなく、「**圧倒的に疲れにくくなった**」ことに驚いていました。体力がついたことで、週末に寝て過ごすことがなくなり、家族とアクティブに外出したり、趣味だった登山を再開したりできるようになったのです。

これは、筋トレによって**基礎体力(QOL:生活の質)**が向上した典型的な例です。体力がなければ、仕事以外の活動にエネルギーを割くことはできません。筋トレは、人生で「できること」の選択肢を増やしてくれるのです。

筋トレが人生を変える。これは真実です。

 

★POINT  まずは、筋肉の力を信じることから始めよう。

「筋肉の力を信じる」とは、単なる精神論ではありません。
筋肉は、体を動かすためだけの部品ではなく、私たちの健康と精神を支える「**最大の臓器**」であるという科学的な事実を受け入れることです。

筋肉は、動かすことで**マイオカイン**と呼ばれる様々なホルモン様物質を分泌します。これらには、脂肪の燃焼を促すもの、炎症を抑えるもの、そして前述したように脳機能(記憶力や気分)に良い影響を与えるものまであります。

あなたの体は、あなたが思っている以上の可能性を秘めています。その可能性を引き出す鍵が「筋肉」です。外見の変化は、その過程で得られる「副産物」の一つに過ぎません。

筋トレを通じて得られる本当の報酬は、**「高められた自己肯定感」「揺るぎない自信」、そして「何にでも挑戦できるという前向きなマインド」**なのです。

人生を変えたいと思うなら、まずは自分自身の筋肉の「力」を信じ、その力を育てることから始めてみませんか。

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