2022.06.26

04 痩せたい? 大きくなりたい? どちらにしても、とにかく代謝を上げる!

第1章 痩せたい? 大きくなりたい?どちらにしても、とにかく代謝を上げる!

ダイエットもバルクアップも
目指すは「代謝のいい体」を手に入れること

「痩せたい(ダイエット)」と「大きくなりたい(バルクアップ)」は、一見すると正反対の目標のように思えます。しかし、どちらの目標を達成する上でも、その成否を分ける最大の鍵が「代謝のコントロール」です。

あなたは、日々三度の食事をとるとき、空腹感を覚えていますか。
食事の時間だからと、なかば義務的に食べていませんか。

毎日パソコンとにらめっこをして、運動はほぼゼロ、という生活を送る現代人は
多いと思います。このような生活をしていると、なかなかお腹が空かないという人もかなりいると思います。
昼休みにおにぎりを2個も食べれば、夜まで持つという人も多いことでしょう。

これは、少しのガソリンでいつまでも走れる軽自動車のようなものだと、私はよくいいます。

この記事では、なぜ「代謝」が両方の目標達成に不可欠なのか、そして「代謝のいい体」とは具体的にどのような状態を指すのかを、科学的に解き明かしていきます。

 

▼代謝とは何か? 3つの構成要素

代謝とは、簡単に言えば食べたものをエネルギーに変える力のことを言います。

専門的には、人間が一日に消費する総カロリー(TDEE: Total Daily Energy Expenditure)は、大きく分けて3つの要素で構成されています。

1. 基礎代謝 (BMR: Basal Metabolic Rate)

これが代謝の「核」です。心臓を動かす、呼吸をする、体温を維持するなど、生命を維持するために最低限必要なエネルギー消費を指します。何もせずじっとしていても消費されるカロリーのことで、一日の総消費カロリーの約60%~70%を占めます。

2. 食事誘発性熱産生 (TEF: Thermic Effect of Food)

食事を消化・吸収・代謝するために消費されるエネルギーです。食べること自体がエネルギーを消費するのです。これは総消費カロリーの約10%を占めます。特にタンパク質は、糖質や脂質に比べてTEFが非常に高い(食べたカロリーの約30%が消費される)ことが特徴です。

3. 活動代謝 (NEATとEAT)

体を動かすことで消費されるエネルギーです。これには2種類あります。

  • 運動性活動熱産生 (EAT: Exercise Activity Thermogenesis): 筋トレやランニングなど、意図的な運動による消費。
  • 非運動性活動熱産生 (NEAT: Non-Exercise Activity Thermogenesis): 運動以外の日常生活での活動(通勤、家事、タイピング、姿勢の維持など)による消費。

元の記事で触れられている「お腹が空かないデスクワーカー」は、3のNEATが極端に低く、かつ1のBMRも低い(後述)状態にあるのです。

 

▼軽自動車からポルシェ本体になろう! (BMRの重要性)

自分の体がそんな軽自動車だとしたら、これからは高級車に生まれ変わるという
イメージしましょう。
それも1台何千万円もするような、ポルシェやフェラーリなどの超高級スポーツカーです。


これらの車は、エンジンが大きくて排気量が多い。
ちょっとアクセルを踏むだけで
一気に加速し、ガソリンもたくさん消費します。

この比喩は、基礎代謝(BMR)の本質を完璧に捉えています。

人間でいえば代謝がいい状態です。
つまり代謝のいい体を手に入れましょう。

「軽自動車」とは、基礎代謝(BMR)が低い体です。エンジン(=BMR)が小さいため、アイドリング(=生命維持)で消費するガソリン(=カロリー)がごくわずかです。そのため、少しガソリンを入れただけ(=おにぎり2個)で、タンク(=許容量)がすぐに満タンになり、それ以上は溢れて(=脂肪として蓄積)しまいます。

一方、「ポルシェ」とは、基礎代謝(BMR)が高い体です。エンジン(=BMR)が巨大なため、ただアイドリングしているだけで大量のガソリンを消費します。常にガソリンを欲している状態(=健康な空腹感)であり、多少多くガソリンを入れても、溢れる前に燃焼させてしまいます。

そして、この「エンジンの大きさ(BMR)」を決定する最大の要因こそが、「筋肉量(除脂肪体重)」なのです。肝臓や脳も多くのエネルギーを消費しますが、私たちが意図的に増やすことができる代謝亢進組織は、事実上「筋肉」だけです。

 

▼「高代謝」が「ダイエット」と「バルクアップ」を両立させる

では、なぜこの「高BMR(ポルシェのエンジン)」が、正反対に見える2つの目標(痩せたい・大きくなりたい)の両方に有効なのでしょうか。

1. 痩せたい(ダイエット)場合

ダイエットの原則は「消費カロリー > 摂取カロリー」(カロリーデフィシット)です。 「軽自動車」の体(BMR 1200kcal)でこれを達成するには、食事を極端に減らす(例:1000kcal)しかなく、空腹感に苦しみます。 しかし、「ポルシェ」の体(BMR 1800kcal)なら、普通に1600kcal食べても、それ自体がデフィシット(赤字)になります。つまり、無理な食事制限をせず、満足感を保ったまま楽に脂肪を落としていけるのです。

2. 大きくなりたい(バルクアップ)場合

バルクアップの原則は「摂取カロリー > 消費カロリー」(カロリーサープラス)です。 「軽自動車」の体(BMR 1200kcal)でサープラス(例:1600kcal)を作ると、小さなエンジンは余ったエネルギーを処理しきれず、その多くを脂肪として蓄積してしまいます(=ただ太る)。 しかし、「ポルシェ」の体(BMR 1800kcal)でサープラス(例:2200kcal)を作ると、活発なエンジン(筋肉)がその余剰エネルギーを積極的に取り込み、筋トレ後の「修復・成長」の材料として使います。その結果、脂肪の増加を最小限に抑え、効率的に筋肉を増やすことができるのです。

 

▼「軽自動車」状態の悪循環

読者のみなさんの多くは、デスクワークが中心で、あまりお腹が空かない軽自動車状態だと思います。
本当はお腹が空いていないけれど、食事の時間が来たから食べるとか、ストレス解消のために必要以上に食べるという人が多いのではないでしょうか。

運動習慣がない人は、体は疲れていないのに、脳は食べ物を欲する。(NEATが低く、BMRも低い状態)

だから食べることをしますが、食べたものがエネルギーとして使いきれないので、脂肪として体に蓄積されてしまいます。(小さなエンジンでは、わずかなサープラスでも処理しきれない)

さらに悪いことに、体脂肪が増え、筋肉量が減ると、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の効きが悪くなります(インスリン抵抗性)。すると、食べたものがますますエネルギーとして使われにくく、脂肪として蓄積されやすくなるという負のスパイラルに陥ります。

 

▼解決策:筋肉というエンジンを搭載する

ただ、もし筋肉がついていれば、エネルギーをちゃんと燃やすことのできる体になって、健康な空腹感を覚えるようになります。

筋肉は、単なる「力」を生み出す器官ではありません。体内で最も多くのエネルギーを消費する「エンジン」であり、最大の「グリコーゲン(糖)貯蔵タンク」です。

筋肉をつける(=筋トレをする)ことで、

  1. BMR(基礎代謝)が恒久的に向上し、「ポルシェ」のエンジンを手に入れられる。
  2. NEAT(非運動性活動)も向上しやすくなる(体が軽くなるため)。
  3. TEF(食事誘発性熱産生)も高まる(筋肉の修復にタンパク質が必要となり、その消化にエネルギーが使われる)。
  4. インスリン感受性が改善し、食べたものが脂肪ではなく筋肉のエネルギー源として使われやすくなる。

これが代謝のいい体になるということです。 「痩せたい」人も「大きくなりたい」人も、まずは筋トレによって「エネルギーを大量に消費・処理できる体(=高BMR・高インスリン感受性)」という共通の土台を築くことが、目標達成への最短ルートなのです。

 

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