2022.06.26
07 日本人はタンパク質の摂取量が圧倒的に足りない。 炭水化物で腹を膨らませてはいけない!
日本人はタンパク質の摂取量が圧倒的に足りない。炭水化物で腹を膨らませてはいけない!
人間が1日に必要とするタンパク質は、
体重1キロにつきおよそ1グラムだと言われています。
しかし、これは厚生労働省が約20年前に発表した「これくらいとっていれば健康に害はないですよ」という「欠乏を防ぐための最低ライン(RDA: 推奨栄養所要量)」です。これは、あくまで平均的な活動量の人が、病気(欠乏症)にならないための守りの数値に過ぎません。
身体を積極的に「作り変えたい」、つまり筋肉量を増やして代謝を上げたいと考える人々にとって、この数値は全く不十分です。
実は、筋肉量を増やし、代謝を上げたいなら、その2〜2・5倍とらなければいけません。
この数値は、科学的にも「アナボリック(筋肉の合成)」な状態を維持するための合理的な範囲です。国際スポーツ栄養学会(ISSN)などの権威ある機関は、活動的な人々やアスリートに対し、体重1kgあたり1.4g~2.0gのタンパク質摂取を推奨しています。これは、トレーニングによって引き起こされる筋タンパク質分解(MPB)を上回る筋タンパク質合成(MPS)を促し、身体を「プラス」の状態(ポジティブ窒素バランス)に保つために必要な量です。
さらに、著者の言う「2.0g~2.5g」という範囲は、特に「体脂肪を落としながら筋肉を維持したい」という減量期(カロリーデフィシット下)において極めて重要になります。エネルギーが不足すると、体は筋肉(タンパク質)を分解してエネルギー源にしようとします(カタボリック)。この異化作用に抵抗し、高価な資産である筋肉を死守するためには、材料となるタンパク質を通常よりさらに多く供給する必要があるのです。
例えば体重60キロの人なら、120g〜150g取らなければなりません。
具体的に言うと、鶏ムネ肉1枚(約200g)に含まれるタンパク質がおよそ40グラムだから、毎日3枚強は食べなくてはいけないということになります。これを3食で割ると、1食あたり鶏ムネ肉1枚分です。従来の「ご飯が主食」の感覚では、達成が困難な量であることがわかります。
しかも最近は2倍どころではなく、もっと必要だという説も出てきています。
3倍、4倍食べないと、筋肉が分解されるのに追いつかないと言われています。
(※これは、非常に高強度なトレーニングを行うトップアスリートや、厳しい減量の最終段階など、極端なカタボリック状態に置かれた特殊なケースを指すことが多いですが、それだけタンパク質の需要が軽視されてきたことの裏返しでもあります。)
▼「炭水化物で腹を膨らませる」ことの致命的な欠陥
ところが、多くのビジネスマンは、時間に追われて、「朝はパンとコーヒー、昼はドンブリもの、夜はラーメン」というような、炭水化物中心の食生活を送っている方が多いと思います。
これでは、タンパク質の摂取量が足りなすぎます。
炭水化物で腹を膨らませていると、タンパク質が入る余地がなくなる。
これだけは絶対に避けたいのです。
この問題は、「お腹がいっぱいでタンパク質が入らない」という物理的な問題だけに留まりません。より深刻なのは、「筋タンパク質合成(MPS)のチャンスを逃し続ける」という時間的な問題です。
体は、炭水化物(糖質)を「グリコーゲン」として筋肉や肝臓にある程度貯蔵できます。脂質は「体脂肪」としてほぼ無制限に貯蔵できます。しかし、タンパク質(アミノ酸)は貯蔵しておくことができません。体は常に、血中アミノ酸プールというごくわずかな「手持ち」の材料でやりくりしています。
筋トレのシグナル(ID 6参照)が入った体は、24~48時間にわたり「筋肉を作りたい!」と要求しています。しかし、昼食が「ドンブリもの(ほぼ炭水化物)」だった場合、その数時間は血中アミノ酸濃度が低下し、体は「材料不足」に陥ります。結果、せっかくの合成シグナルが空振りし、筋肉を合成するチャンス(アナボリック・ウィンドウ)を丸ごと失うことになるのです。これが「食事は1日3回、チャンスは21回」の真意です。
炭水化物(糖質)は「エネルギー(ガソリン)」であり、タンパク質は「体の材料(コンクリート)」です。炭水化物だけで腹を膨らませる行為は、ガソリン満タンのまま、材料ゼロで建設現場に向かうようなものなのです。
▼スポーツ界でもシニアになると差がつくのは、タンパク質摂取量の差
私が気になっているのは、アスリートたちのタンパク質不足です。
日本のスポーツ界において、ジュニアやユースの世代は世界での活躍が多々見られます。
体格も、10代のうちはそれほど差がなく、
技術的にも優っているように見えます。
しかし、それがシニアの世代になると、フィジカル面での差が開いていきます。
海外の選手は20代、30代になってからのほうが伸びることが少なくありません。
それはやはり子どものころから日常的にタンパク質を大量に食べる習慣が根づいているからだと思っています。
日本の場合、野球でもサッカーでも本格的にスポーツをやっている子どもたちは、とにかく「コメを食え」と言われます。
高校球児が合宿などでドンブリ飯を何杯も食べさせられている映像を見たことがある人も多いと思います。
豊富な練習量に必要なエネルギーを補給するという意味合いが大きいのだと思います。
この「エネルギー補給」という視点自体は間違っていません。炭水化物は運動の主要なエネルギー源(筋グリコーゲン)であり、練習や試合でのパフォーマンスを維持するために不可欠です。問題は、「エネルギー補給(炭水化物)」が最優先され、「身体の修復と成長(タンパク質)」が二の次にされてきた点にあります。
練習(運動)とは、本来「身体を破壊する行為」です。その破壊から「回復・適応(=より強くなる)」するためにこそ、タンパク質が必要です。「コメを食え」という指導だけでは、練習で使ったエネルギーは回復しますが、練習で破壊された筋線維を修復・強化するための「材料」が決定的に不足します。
しかし、欧米などのスポーツ先進国では、若いころから炭水化物ではなく、
積極的にタンパク質をとることが重視されています。
彼らの食事の基本は「タンパク源(肉、魚、卵)ファースト」です。まず、身体の材料であるタンパク質を必要量(例:1.6g/kg以上)確保し、その後、その日の練習量(=エネルギー消費量)に応じて炭水化物の量(=ガソリンの量)を調整します。
この「タンパク質を固定し、炭水化物を変動させる」という考え方に基づいた栄養摂取を10代から続けることで、身体の「材料不足」が起こらず、毎回のトレーニングが着実に筋肥大とフィジカル強化に結びつきます。この日々の「適応」の蓄積こそが、20代、30代になってからの圧倒的なフィジカルの差となって現れるのです。
もちろん、炭水化物は重要な栄養素です。
しかし、本当に健康な体をつくるためには、スポーツ選手に限らず、私たちもタンパク質を意識的に摂取するよう心がけるべきなのです。「主食(炭水化物)」という概念から脱却し、「主菜(タンパク質)」こそが食事の土台である、という意識改革が求められています。
★POINT トレーニーの主食は炭水化物ではなく、タンパク質!
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