2022.06.27
19 ビタミン・ミネラルの力を侮るな!
19 ビタミン・ミネラルの力を侮るな!
ここからは、タンパク質以外の栄養素について、筋肉をつけるのに役立つものに絞って解説していきます。
すでに述べたように、糖質、脂質、タンパク質の3つを三大栄養素といいます。これにビタミン、ミネラルを加えたものが五大栄養素です。
つまりビタミンとミネラルは三大栄養素には入っていません。
そのため栄養素としてちょっと「格下」の印象があることは否めません。
また、トレーニーは、どうしてもタンパク質に注目しがちで、他の栄養素を軽視する傾向があります。しかし、これは大きな誤解です。
ビタミン・ミネラルの重要性:三大栄養素を支える補助栄養素
ビタミン・ミネラルが担う重要な役割
ビタミンとミネラルは、糖質代謝・脂質代謝という大事な役割を担っています。
これは簡単にいえば、糖質や脂質をエネルギーに変えやすくすることです。
なのでビタミンやミネラルが不足してしまうと、いくらタンパク質をとっても筋肉まで栄養が届かなかったり、糖質がうまくエネルギーにならず、脂肪として蓄えられてしまったりしてしまいます。
ということは、「格下」どころではありません。
われわれ体づくりをする者にとっては、絶対に欠かせない栄養素なのです。
ビタミンとミネラルは、補酵素や補因子として機能し、三大栄養素の代謝を促進する働きがあります。補酵素とは、酵素の働きを助ける物質であり、補酵素がないと、酵素は正常に機能することができません。つまり、ビタミンやミネラルが不足すると、糖質や脂質、タンパク質の代謝が滞り、エネルギー産生や筋肉の合成が阻害される可能性があります。
また、ビタミンやミネラルは、抗酸化作用や抗炎症作用を持つものもあり、特に激しい運動により発生する活性酸素を中和し、筋肉の炎症を抑制する働きがあります。これらの作用により、間接的に筋トレのパフォーマンス向上や筋肉の回復促進に寄与する可能性があります。
ビタミンB群:三大栄養素の代謝を支える
ビタミンB群の基本的な役割
ちなみに、ビタミンは種類によってその働きが違います。
糖質、脂質、タンパク質のそれぞれに、いわば「相性のいいビタミン」があります。
そして、それは主にビタミンB群に集中しています。
ビタミンB群は、8種類の水溶性ビタミンの総称で、それぞれが異なる役割を担っていますが、共通してエネルギー代謝に関与している点が特徴です。ビタミンB群は、体内で貯蔵されにくく、過剰に摂取しても尿中に排泄されるため、毎日の摂取が必要です。特に、激しいトレーニングを行う場合には、ビタミンB群の消費量が増加するため、より多くの摂取が推奨されます。
ビタミンB1:糖質代謝の鍵
まず糖質をパワーとして使いやすくするのがビタミンB1です。
ビタミンB1が含まれる食材は玄米、大豆、豚肉などになります。
ビタミンB1(チアミン)は、糖質をエネルギーに変換する際に不可欠な補酵素として機能します。具体的には、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体という酵素の補酵素として、ピルビン酸をアセチルCoAに変換し、クエン酸回路(TCAサイクル)に入る過程を促進します。ビタミンB1が不足すると、糖質の代謝が滞り、乳酸が蓄積し、疲労感や集中力の低下を引き起こす可能性があります。
また、ビタミンB1は、脂質の代謝にも関与しています。脂質をエネルギーに変換する際には、糖質の代謝経路を利用するため、ビタミンB1が不足すると、脂質の代謝も阻害される可能性があります。成人男性のビタミンB1推奨摂取量は、1日あたり1.4ミリグラムとされていますが、激しいトレーニングを行う場合には、より多くの摂取が必要になる可能性があります。
ビタミンB2:脂質代謝の促進
次に脂質をエネルギーに変えやすくするのもビタミンB1、そしてビタミンB2。
ビタミンB2が多いのはレバー、ウナギ、チーズ、納豆、卵などがあります。
ビタミンB1も脂質をエネルギーに変えるためには大事ですが、ビタミンB2も積極的にとれば、ビタミンB1の働きはさらに高まります。
ビタミンB2(リボフラビン)は、脂質の代謝に関与する補酵素として機能します。具体的には、脂肪酸のβ酸化において、アシルCoAデヒドロゲナーゼという酵素の補酵素として、脂肪酸をアセチルCoAに変換する過程を促進します。また、ビタミンB2は、ビタミンB1と協力して、糖質の代謝も促進する働きがあります。
さらに、ビタミンB2は、抗酸化作用を持つことが知られており、特に激しい運動により発生する活性酸素を中和する働きがあります。また、ビタミンB2は、他のビタミンB群の活性化にも関与しており、ビタミンB群全体の機能を高める働きがあります。成人男性のビタミンB2推奨摂取量は、1日あたり1.6ミリグラムとされていますが、激しいトレーニングを行う場合には、より多くの摂取が必要になる可能性があります。
ビタミンB6:タンパク質代謝のサポート
タンパク質はどのビタミンとも相性がいいのですが、特にいいのがタンパク質を構成するアミノ酸の代謝を助けるビタミンB6です。
簡単に言うと、摂取したタンパク質を筋肉に変えるサポートをしてくれる働きがあるからです。
ビタミンB6は、マグロ、イワシ、カツオ、大豆、米、クルミなどに多く含まれています。
ビタミンB6(ピリドキシン)は、タンパク質の代謝に関与する補酵素として機能します。具体的には、アミノ酸の転移反応や脱炭酸反応において、補酵素として機能し、アミノ酸の代謝を促進します。特に、筋タンパク質合成に重要なロイシンやバリン、イソロイシンといった分岐鎖アミノ酸(BCAA)の代謝において、ビタミンB6が重要な役割を果たします。
また、ビタミンB6は、ヘモグロビンの合成にも関与しており、特に赤血球の形成に重要な役割を果たします。さらに、ビタミンB6は、神経伝達物質の合成にも関与しており、特にセロトニンやドーパミンなどの合成に関与しています。成人男性のビタミンB6推奨摂取量は、1日あたり1.4ミリグラムとされていますが、タンパク質の摂取量が多い場合には、より多くの摂取が必要になる可能性があります。
ミネラル:筋肉の成長をサポートしてくれる
ミネラルの基本的な役割
また、鉄や亜鉛、マグネシウムなどのミネラルも積極的に摂取したい栄養素です。
これらのミネラルには、テストステロンや成長ホルモンの分泌を促したり、運動時に必要なエネルギーを産出するなど、トレーニーにとって不可欠な栄養素となります。
ミネラルは、無機質とも呼ばれ、体内で様々な機能を果たしています。特に、酵素の活性化、ホルモンの合成、神経伝達、筋肉収縮など、生命活動に不可欠な機能を支えています。ミネラルは、体内で合成することができないため、食事から摂取する必要があります。また、ミネラルは、相互に影響し合っており、バランス良く摂取することが重要です。
鉄:酸素運搬とエネルギー産生
なお、鉄は、レバーやホウレンソウ、亜鉛は、カキやレバー、マグネシウムは木綿豆腐やゴボウ、アサリなどに多く含まれています。
鉄は、ヘモグロビンやミオグロビンの構成成分として、酸素運搬に不可欠なミネラルです。特に、激しいトレーニングを行う場合には、酸素需要が増加するため、鉄の需要も増加します。鉄が不足すると、ヘモグロビンの合成が阻害され、貧血を引き起こす可能性があります。また、鉄は、クエン酸回路(TCAサイクル)において、電子伝達系の構成要素として機能し、ATP(アデノシン三リン酸)の産生に関与しています。
鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。ヘム鉄は、動物性食品に含まれており、吸収率が約15〜25%と高いのに対し、非ヘム鉄は、植物性食品に含まれており、吸収率が約2〜5%と低いです。ただし、ビタミンCと一緒に摂取することで、非ヘム鉄の吸収率を向上させることができます。成人男性の鉄推奨摂取量は、1日あたり7.5ミリグラムとされていますが、激しいトレーニングを行う場合には、より多くの摂取が必要になる可能性があります。
亜鉛:ホルモン合成とタンパク質合成
亜鉛は、300種類以上の酵素の活性化に関与しており、特にタンパク質合成やDNA合成に重要な役割を果たします。また、亜鉛は、テストステロンの合成にも関与しており、特に亜鉛が不足すると、テストステロンの分泌が低下する可能性があります。さらに、亜鉛は、免疫機能にも重要な役割を果たしており、特に激しいトレーニングを行う場合には、免疫機能の維持に重要です。
亜鉛は、特に激しいトレーニングを行う場合や、発汗が多い場合には、汗とともに失われるため、より多くの摂取が必要になる可能性があります。成人男性の亜鉛推奨摂取量は、1日あたり10ミリグラムとされていますが、激しいトレーニングを行う場合には、より多くの摂取が必要になる可能性があります。
マグネシウム:エネルギー産生と筋肉収縮
マグネシウムは、300種類以上の酵素の活性化に関与しており、特にATP(アデノシン三リン酸)の産生に関与しています。ATPは、筋肉収縮のエネルギー源であり、マグネシウムが不足すると、ATPの産生が阻害され、筋肉のパフォーマンスが低下する可能性があります。また、マグネシウムは、筋肉の収縮と弛緩にも関与しており、特にカルシウムと協力して、筋肉の正常な機能を維持しています。
さらに、マグネシウムは、テストステロンや成長ホルモンの分泌にも関与しており、特にマグネシウムが不足すると、これらのホルモンの分泌が低下する可能性があります。成人男性のマグネシウム推奨摂取量は、1日あたり340ミリグラムとされていますが、激しいトレーニングを行う場合には、より多くの摂取が必要になる可能性があります。
★POINT:タンパク質だけでは、筋肉は大きくならない!
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