2022.06.27

30 どう食べるかだけでなく「いつ食べるか?」も重要。タンパク質は、摂取のタイミングによって効果に圧倒的な差がつく

トレーニングとプロテイン摂取のタイミング

「ゴールデンタイム」の神話と真実。「いつ食べるか」より重要なタンパク質摂取の科学

「食べる筋トレ」において、何をどれだけ食べるか(PFCバランス)が重要であることは、これまでの記事で解説してきました。しかし、もう一つ、体作りを加速させるために無視できない変数があります。それが「いつ食べるか」という「タイミング」の問題です。

ここからは、増量期にも減量期にも欠かせない、タンパク質摂取の「タイミング」について、科学的根拠に基づき深掘りします。

実は、タンパク質を「いつとるか」によっても、筋肉の育ち方に差が出る可能性があります。

これまで、多くのボディビルダーやトレーニーたちのあいだで、半ば常識として語られてきたのが、いわゆる「ゴールデンタイム(アナボリック・ウィンドウ)」の神話です。

「トレーニングをしてから30分(長くても1時間)以内にプロテインを飲むと、筋肉が最も大きくなる」—— 。

このため、多くのジムには「プロテインバー」が併設され、トレーニーたちはトレーニング直後にシェイカーを握りしめます。「自宅に帰ったあと飲むのでは最適な摂取のタイミングを逃してしまう」と、トレーニング後のプロテイン摂取を「義務」として捉えている人も多いのではないでしょうか。

 

1. 「ゴールデンタイム(30分)」神話は本当か?

この「トレ後30分」という常識も、近年の多くの研究によって、その重要性が見直されつつあります。

もちろん、トレーニング直後に体が栄養を求めているのは事実です。筋トレによって筋繊維は傷つき、筋グリコーゲン(筋肉のガソリン)は消費され、体は筋肉の合成(MPS: Muscle Protein Synthesis)シグナルを高めています。

しかし、この「合成シグナルが高まっている状態(アナボリック・ウィンドウ)」は、わずか30分で閉じてしまうほど短くないことが、現代の科学では明らかになっています。実際には、このウィンドウはトレーニング後、最低でも24時間、長ければ48時間持続するとされています。

では、なぜ「30分」が強調されてきたのでしょうか。それは「空腹時(Fasted State)」でトレーニングした場合の研究が誇張されて伝わった可能性があります。例えば、朝食前にトレーニングした場合、体はエネルギーもアミノ酸も枯渇しています。この場合は、1秒でも早く栄養(タンパク質と糖質)を補給することが、筋肉の分解を防ぎ、合成を高めるために極めて重要です。この「緊急性」が、すべての場合に当てはまるかのように広まってしまったのです。

 

2. 元の記事が指摘する「トレーニング前のタンパク質摂取」の重要性

元の記事では、この古い常識に対して、非常に重要な指摘がなされています。

実は、最近、トレーニング前にもプロテインを飲むといいと言われ始めているからです。

なぜなら、体がプロテイン(ホエイプロテインなどの消化が早いものでも)を消化・吸収し、血中のアミノ酸濃度を高めるまでには、摂取してから約1〜2時間かかることがわかってきたからです。

ということは、トレーニング直後にプロテインを飲んでも、そのアミノ酸が血流に乗って筋肉に届き始めるのは、ジムを出て帰宅する頃になってしまうのです。

では、どうすればいいのか?
答えは、元の記事が示唆するように、「トレーニング前」に摂取することです。

「ペリ・ワークアウト」という新常識

トレーニングの1〜2時間前に、タンパク質(と炭水化物)を摂取しておくとどうなるでしょうか。

消化・吸収のタイムラグにより、あなたが「トレーニングを実際に行っている最中」に、血中のアミノ酸濃度がピークに達します。

血中に豊富なアミノ酸(筋肉の材料)がある状態でトレーニングを行うことには、計り知れないメリットがあります。

  1. 筋肉分解(カタボリック)の強力な抑制:
    トレーニング中は、筋肉の合成(アナボリック)と同時に、分解(カタボリック)も進行しています。血中にアミノ酸が豊富にあれば、このトレーニング中の筋肉分解を最小限に抑え込むことができます(アンチ・カタボリック効果)。
  2. 即時の修復開始:
    トレーニングによって筋肉が「修復(合成)シグナル」を発した瞬間、すでに血中に大量の「材料(アミノ酸)」が待機している状態になります。これにより、トレーニング直後(あるいはセット間)から即座に筋肉の修復プロセスが開始されます。

トレーニング「後」に慌てて材料を注文する(プロテインを飲む)のではなく、トレーニング「前」に材料を発注しておく(飲んでおく)ことで、工事(トレーニング)開始と同時に、修復(アナボリック)がスタートできるのです。

この、トレーニング前(Pre)、中(Intra)、後(Post)を一つの「枠」として捉える栄養戦略を「ペリ・ワークアウト(Peri-Workout)栄養戦略」と呼びます。

 

3. 結論:本当に重要なのは「タイミング」よりも「総量」と「配分」

「じゃあ、トレ前とトレ後、どっちが大事なんだ?」という疑問が湧くかと思いますが、最新の栄養科学が出した結論は、驚くほどシンプルです。

2013年に行われた、タンパク質のタイミングに関する複数の研究をまとめたメタアナリシス(最も信頼性の高い研究手法の一つ)では、「トレーニング直後のタンパク質摂取が筋肥大に与える影響は、あったとしても非常に小さい」とし、それよりも遥かに重要な要因が2つあると結論付けています。

最優先事項①:1日の「総タンパク質摂取量」

これが全ての土台です。「いつ」食べるかを気にする前に、「1日に必要な量」を足りていなければ、筋肉は絶対に成長しません。筋肥大を目指すトレーニーは、「体重1kgあたり 1.6g 〜 2.2g」のタンパク質を毎日摂取することを最優先にしてください。
(例:体重70kgの人なら、1日 112g 〜 154g)

最優先事項②:タンパク質の「均等な配分」

1日の総量(例:120g)を、朝昼晩の3食で(例:20g, 20g, 80g)と偏って摂るよりも、1食あたり20〜40gのタンパク質を、3〜5時間おきに、4〜5回に分けて均等に摂取するほうが、1日を通して筋肉の合成(MPS)レベルを高く維持できることが分かっています。

【理想的なタンパク質配分(1日120gの場合)】

  • 朝食:30g
  • 昼食:30g
  • トレーニング前(16時):30g
  • 夕食(19時):30g
  • (就寝前:カゼインなど30g ※総量150gの場合)

この「総量」と「配分」さえ守れていれば、「トレーニング後30分」にプロテインを飲めなかったとしても、全く問題ありません。

例えば、昼食(12時)に高タンパクな食事(鶏肉30gなど)を摂り、15時からトレーニングした場合。血中アミノ酸濃度はまだ高いレベルにあるため、慌てて16時にプロテインを飲む必要はなく、18時〜19時の「夕食」でしっかりタンパク質を補給すれば、「ペリ・ワークアウト」の枠内に完璧に収まります。

 

まとめ:「ゴールデンタイム」の呪縛から解放されよう

「トレーニング後30分」という強迫観念は、もはや過去のものです。その呪縛から解放され、より本質的な戦略に目を向けましょう。

  1. 【最優先】1日の総タンパク質量(体重×1.6〜2.2g)を確保する。
  2. 【次点】その総量を、1日4〜5回に「均等配分」する(1回20〜40g)。
  3. 【戦略】その「配分」のうちの1回を「トレーニング前(1〜2時間前)」に、もう1回を「トレーニング後(1〜2時間後)」に配置する。

この3点を守ることこそが、筋肉の成長を最大化する「最新のタイミング戦略」です。

元の記事が指摘するように、トレーニング直後の摂取(帰宅後)だけでは、最も重要な「トレーニング中」の血中アミノ酸濃度が不足する可能性があります。「トレーニング前」の食事(タンパク質)も疎かにしないこと。これが上級者への第一歩です。

「筋肉食堂DELI」のお弁当は、1食で30〜40g以上の高品質なタンパク質が摂取できるよう完璧に設計されています。これを「昼食」や「トレーニング2時間前の食事」、あるいは「トレーニング後の夕食」として活用することで、あなたは面倒な計算なしに、この「理想的なタンパク質配分」を実践し、「食べる筋トレ」の効果を最大化することができます。

筋肉食堂の食事内容を見てみる