2022.06.27

33 筋肉は空腹時に壊される。 空腹よりはジャンクフードのほうがマシ! 腹が減る前にタンパク質を小分けにして食べろ

小分けにして食べる食事(分食)のイメージ

筋肉は「空腹時」に壊される。腹が減る前に「分食」でアミノ酸濃度を維持せよ

 

すでに述べたように、筋肉はタンパク質でできています。
 

ですが、口から摂取したタンパク質が、そのまま筋肉になるわけではありません。摂取したタンパク質はいったん体内でアミノ酸に分解され、栄養として吸収されて、そして再びアミノ酸を合成することで筋肉(筋タンパク質)がつくられます。


したがって、体内にアミノ酸をスタンバイさせておくと(=血中アミノ酸濃度を高く保つと)、いつでも筋肉がつくられるので、筋肉がつきやすくなります。

しかし、この「アミノ酸濃度を高く保つ」生活は、実は意外と難しいです。
それは私たちの体が、アミノ酸の原料であるタンパク質を一度に「筋肉の合成に使える量」に限りがあるからです。32 三食すべてでタンパク質をとる。 「足りないなと」思ったら、「追いタンパク」で一品追加せよ参照)
 

そして、それ以上に恐ろしいのが、「空腹」という状態です。空腹は、トレーニーにとって「筋肉が壊されている」というシグナルに他なりません。

この記事では、なぜ「空腹」がトレーニーの最大の敵なのか、そして、それを防ぎ、筋肉の成長を最大化する「分食」という戦略、さらには「空腹よりジャンクフードのほうがマシ」という言葉の科学的な真意について、徹底的に解説します。

 

1. 恐怖の「カタボリック」:なぜ空腹時に筋肉は壊されるのか?

「お腹が空いた」と感じたとき、あなたの体は「エネルギー切れ(枯渇)」の状態にあります。この時、体は生命維持(特に脳の活動)のために、あらゆる手段を使ってエネルギー源を確保しようとします。

まず、肝臓のグリコーゲンが使われますが、それも数時間で枯渇します。次に体脂肪を分解しようとしますが、脳はブドウ糖(糖質)を主要なエネルギー源としているため、脂肪(脂肪酸)だけでは補いきれません。

そこで体(肝臓)が最終手段として行うのが**「糖新生(とうしんせい)」**です。これは、「糖質以外のものから、無理やり糖質(ブドウ糖)を作り出す」という緊急システムです。

この「糖新生」の主な材料(アミノ酸)は、どこから調達されるのでしょうか?
答えは、「あなたの筋肉」です。体は、自らの筋肉を「分解(カタボリック)」してアミノ酸を取り出し、それを肝臓に送ってブドウ糖に作り変え、脳のエネルギーとして使おうとします。

つまり、「空腹が長く続く」=「筋肉が分解され、エネルギー源として燃やされている」という、トレーニーにとって最悪の事態が進行しているのです。これが、元の記事が「筋肉は空腹時に壊される」と断言する理由です。

 

2. アナボリックの鍵「分食」:なぜ3〜4時間ごとなのか?

この最悪のカタボリック状態を防ぎ、筋肉を成長させる(アナボリックな)状態を維持する方法。それが、元の記事が推奨する「分食(ぶんしょく)」です。

「だいたい3、4時間ごとに何か口に入れる」というイメージです。

なぜ、この「3〜4時間ごと」というリズムが、筋肉の成長に最適なのでしょうか。これは、32 三食すべてでタンパク質をとる。 「足りないなと」思ったら、「追いタンパク」で一品追加せよで解説した「筋タンパク質合成(MPS)」のメカニズムと深く関連しています。

A) MPS(筋肉合成)の「スイッチ」と「持続時間」

筋肉の合成(MPS)のスイッチは、1食あたり20〜40gの高品質なタンパク質を摂取することで「ON」になります。このスイッチは一度ONになると、約3〜5時間持続します。

B) MPSの「不応期(ふおうき)」

重要なのは、MPSのスイッチは一度ONになると、その効果が切れるまでの間(3〜5時間)、たとえ血中にアミノ酸が豊富に残っていても、追加の刺激には反応しにくくなる「不応期(Refractory Period)」があると考えられていることです。

つまり、一度に大量(80gなど)のタンパク質を摂っても、MPSのスイッチが「より強く」「より長く」押されるわけではなく、合成できる量には上限(Muscle-Full Effect)があり、残りはエネルギーとして使われるか、体脂肪になる可能性が高まります。

C) 3〜4時間ごとの「分食」が最強の理由

この体のメカニズムを最大限に活用するのが「3〜4時間ごとの分食」です。

【例:1日5回の分食】

  1. 朝7時:食事①(タンパク質30g) → MPSスイッチON(〜11時まで持続)
  2. 11時:食事②(タンパク質30g) → スイッチがリセットされ、再びMPSスイッチON(〜15時まで持続)
  3. 15時:食事③(トレ前・タンパク質30g) → 再びMPSスイッチON(〜19時まで持続)
  4. 19時:食事④(トレ後・タンパク質30g) → 再びMPSスイッチON(〜23時まで持続)
  5. 23時:食事⑤(就寝前・タンパク質30g) → 再びMPSスイッチON(睡眠中のカタボリックを防ぐ)

このように、1日のタンパク質総量を「小分け」にして3〜4時間ごとに摂取することで、1日を通して「カタボリック(分解)」状態になる時間を限りなくゼロに近づけ、かつ「アナボリック(合成)」のスイッチを何度も何度も押し直すことができます。

これが、血中アミノ酸濃度を高く保ち、筋肉を効率よく成長させるための、科学的に最も合理的な戦略です。

 

3. 「空腹よりジャンクフードがマシ」の科学的真意

元の記事には、非常に衝撃的な一文があります。
「空腹(カタボリック)状態が続くくらいなら、ジャンクフードのほうがマシ」—— 。

これは、決してジャンクフードを推奨するものではありません。しかし、ここには「カタボリックを止める」という観点での、重要な科学的真実が隠されています。

インスリンの「超・抗カタボリック作用」

「空腹」状態とは、血中の糖が枯渇し、インスリンレベルが非常に低い状態です。この「低インスリン」状態こそが、カタボリック(筋肉分解)が進行する合図となります。

では、ここに「ジャンクフード」(例:ドーナツやポテトチップスなど、糖質と脂質の塊)を投入するとどうなるでしょうか。

血糖値が急上昇し、体はそれを抑えるために「インスリン」を大量に分泌します。

23 減量期は、血糖値の急上昇に気をつけろ!では「インスリン=脂肪を蓄積する」と解説しましたが、インスリンにはもう一つの、トレーニーにとって非常に重要な顔があります。それは、「体内最強のアンチ・カタボリック(抗・筋肉分解)ホルモン」であるという顔です。(31 トレーニング後の 「タンパク質+糖質」が最強である理由参照)

インスリンは、その分泌量が少しでも増えると、体に「エネルギーが入ってきたぞ!もう筋肉を分解(糖新生)する必要はない!」という強力なシグナルを送り、筋肉の分解(カタボリック)を「即時停止」させます。

「マシ」の論理:アナボリックか、アンチ・カタボリックか

  • 空腹(Fasting):
    アナボリック(合成): OFF
    カタボリック(分解): ON (最悪の状態)
  • ジャンクフード (Junk Food):
    アナボリック(合成): OFF (タンパク質がないため)
    カタボリック(分解): OFF (インスリンが停止させる)
    (※体脂肪の合成はONになります)
  • 理想的な間食 (例:プロテイン):
    アナボリック(合成): ON (タンパク質がスイッチを入れる)
    カタボリック(分解): OFF (インスリンやアミノ酸が停止させる) (最高の状態)

この比較で分かる通り、「空腹」は筋肉の分解が一方的に進む最悪の状態です。一方で「ジャンクフード」は、筋肉の合成はできませんが、少なくとも「筋肉の分解」は食い止めることができます。

「空腹よりジャンクフードがマシ」とは、「筋肉が分解され続ける(マイナス)よりは、分解を止めて現状維持(ゼロ)にするほうがマシだ(たとえ脂肪が多少増えるリスクを負ってでも)」という、究極のダメージコントロール論なのです。

 

まとめ:腹が減る前に「追いタンパク」を

この記事から学ぶべき最も重要な教訓は、「空腹」という感覚を放置してはいけない、ということです。「お腹が鳴った」瞬間、あなたはすでにカタボリック状態に陥っています。

真のトレーニーは、「お腹が空いたから食べる」のではありません。「カタボリックを防ぐため、そしてアナボリックのスイッチを入れ続けるため」に、「腹が減る前に」戦略的に栄養補給を行います。

その戦略が「3〜4時間ごとの分食」です。

もちろん、その間食はジャンクフードであるべきではありません。32 三食すべてでタンパク質をとる。 「足りないなと」思ったら、「追いタンパク」で一品追加せよで解説した「追いタンパク」(サラダチキン、ゆで卵、プロテインドリンクなど)こそが、カタボリックを防ぎ、同時にアナボリックのスイッチを入れる「理想的な一手」です。

「筋肉食堂DELI」の冷凍弁当は、この「分食」戦略において、完璧なソリューションとなります。1食で十分な(30g以上)タンパク質を摂取できるため、忙しい日の昼食や、トレーニング前後の食事として活用すれば、血中アミノ酸濃度を理想的な状態に保ち、1日中アナボリックな環境を維持するための、最も強力なサポートとなるでしょう。

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