2022.06.27

36 どうしても飲みたい? それなら、ハイボール一択!

ハイボール(ウイスキーと炭酸水)

【トレーニーの飲酒術】どうしても飲むなら「ハイボール一択」。筋肉へのダメージを最小化する科学的戦略


前項(ID 35)で解説したように、アルコールはトレーニーにとって「大敵」であり、筋肉の分解(カタボリック)、合成(アナボリック)の阻害、脂肪燃焼の停止など、数多くの弊害をもたらします。本気で体を変えるなら、基本的に飲まない(禁酒する)に越したことはありません。

しかし、あまり厳密に禁酒をすると、たまったストレスが爆発し、かえって暴飲暴食につながるリスクもあります。

また、お酒は人間関係の潤滑油でもあります。仕事の都合などで、どうしてもお酒を飲む機会が多い人もいるかと思います。


そこで私がおすすめするのは、お酒と「上手につきあう」ことです。ゼロか100かではなく、飲む「量」を最小限にし、そして飲む「お酒の種類」と「おつまみ」を賢く選ぶことで、体づくりへのダメージを最小限に抑えるのです。
そのためには、お酒の種類ごとの特徴を科学的に知っておく必要があります。

 

1. 運命の分岐点:「醸造酒」 vs 「蒸留酒」

お酒は製造方法によって、大きく「醸造酒」と「蒸留酒」に分けられます。

・醸造酒(じょうぞうしゅ)
穀物や果実などを酵母でアルコール発酵させたものです。日本酒(米)、ビール(麦)、ワイン(ブドウ)などがこれにあたります。

・蒸留酒(じょうりゅうしゅ)
醸造酒をさらに「蒸留(液体を加熱して蒸気にし、それを冷やして再び液体に戻すプロセス)」させたものです。これにより、アルコールの純度が高められます。焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ジン、ブランデー、テキーラなどがこれにあたります。

トレーニーがまず覚えるべき大原則は、元の記事が指摘する通り、
「醸造酒=太りやすい(ダメージ大)」「蒸留酒=太りにくい(ダメージ小)」
ということです。

 

2. なぜ「蒸留酒」がマストなのか? 3つの科学的理由

なぜ、トレーニーは蒸留酒(特にハイボール=ウイスキーの炭酸割り)を選ぶべきなのでしょうか。その理由は3つあります。

理由①:糖質が「ゼロ」である

これが最大の理由です。
ビール、日本酒、ワイン、梅酒などの醸造酒には、アルコールのカロリー(1g=7kcal)に加えて、原料由来の「糖質」が大量に含まれています。

  • ビール(中ジョッキ): 約10〜15g の糖質
  • 日本酒(1合): 約8〜10g の糖質
  • 甘口のワインやカクテル: さらに多くの糖質(砂糖)

ID 35で解説した通り、アルコール摂取中は「脂肪燃焼が停止」しています。その状態で、血糖値を急上昇させる「糖質」を同時に摂取することは、「脂肪燃焼停止 + 脂肪合成促進(インスリン)」という、最悪のコンボを意味します。体脂肪の蓄積は免れません。

一方、ウイスキーや焼酎などの「蒸留酒」は、蒸留の過程で糖質やタンパク質などの栄養素がすべて取り除かれます。そのため、「糖質ゼロ」です。アルコール自体のカロリー(7kcal/g)はありますが、血糖値を刺激しないため、インスリンの過剰分泌による「脂肪合成モード」を回避することができます。

(※もちろん、これを甘いジュースやコーラで割っては意味がありません。水、炭酸水、無糖のお茶で割るのが絶対条件です。「ハイボール」が推奨されるのは、この条件を満たしているからです)

理由②:不純物(コンジナー)が少ない

二日酔いのひどさや、体への負担(ストレス)は、アルコールの量だけでなく、「コンジナー(Congener)」と呼ばれる不純物の量にも左右されます。

コンジナーとは、醸造の過程で生まれる、エタノール以外の微量な化学物質(メタノール、アセトン、タンニン、フーゼル油など)の総称です。これらは、お酒の「風味」や「色」を生み出す一方で、肝臓での解毒に時間がかかり、頭痛や吐き気といった二日酔いの主な原因となります。

  • コンジナーが多い酒(=色が濃い醸造酒・蒸留酒):
    赤ワイン、ブランデー、ウイスキー(特にバーボン)、テキーラ
  • コンジナーが少ない酒(=色が薄い蒸留酒):
    ウォッカ、ジン、焼酎(甲類)

コンジナーが多いお酒は、それだけ肝臓に負担をかけ、解毒のためのストレス(=コルチゾールの分泌=筋肉分解)を長引かせる可能性があります。最も「クリーン」で体への負担が少ないのは、ウォッカやジン、焼酎(甲類)です。

ただし、ウイスキー(ハイボール)も蒸留酒であるため、醸造酒(ビールや赤ワイン)に比べればコンジナーは少なく、許容範囲と言えます。ウイスキーに含まれるポリフェノール(樽由来のエラグ酸など)の抗酸化作用を期待する声もありますが、それによるメリットよりもアルコールのデメリットが遥かに上回るため、過度な期待は禁物です。

理由③:満足感(炭酸)と量のコントロール

ハイボールは炭酸水で割るため、満腹感を得やすく、ビールのように「ジョッキで一気飲み」をしにくくなります。これにより、アルコールの総摂取量をコントロールしやすいというメリットがあります。

 

3. 飲酒のダメージを最小化する「おつまみの科学」

お酒を「蒸留酒(ハイボール)」に変えただけでは、まだ不十分です。ダメージコントロールの成否は、一緒に食べる「おつまみ」にかかっています。

前述の通り、飲酒中は「脂肪燃焼が停止」し、「食べたものが脂肪になりやすい」状態です。この最悪のタイミングで、絶対に食べてはいけないものと、積極的に食べるべきものがあります。

【厳禁】アルコール +「脂質 or 糖質」の最悪コンボ

  • フライドポテト / 唐揚げ / 天ぷら(脂質+糖質): 最も最悪な組み合わせ。脂肪蓄積の直行便です。
  • ピザ / パスタ / グラタン(脂質+糖質)
  • ポテトサラダ / マカロニサラダ(脂質+糖質)
  • 締めのラーメン / お茶漬け(糖質): 酔った体への最後の一撃。絶対に避けてください。

【推奨】「追いタンパク」&「食物繊維」で筋肉を守る

飲むと決めた日は、ID 32で解説した「追いタンパク」の技術を総動員します。アルコールによるカタボリック(筋肉分解)に対抗できる唯一の手段は、血中アミノ酸濃度を高く保ち、筋肉の材料を常に補給し続けることです。

《最強のおつまみリスト(高タンパク・低脂質・低糖質)》

  1. 枝豆:
    「畑の肉」と呼ばれる高タンパク食材。アルコールの代謝を助けるビタミンB1やメチオニンも豊富です。
  2. 冷奴 / 湯豆腐:
    低カロリーで高タンパク。しょうがやネギ(薬味)をたっぷり乗せて。
  3. 焼き鳥(塩・タレNG):
    「むね」「ささみ」「なんこつ」「砂肝」「レバー」を選びます。「もも(皮なし)」も可。「つくね(タレ)」や「皮」は脂質と糖質が多いので避けます。
  4. 刺身盛り合わせ / タコぶつ:
    マグロ赤身、イカ、タコ、貝類、白身魚など、高タンパク・低脂質な最高の選択肢。サバやブリは脂質(オメガ3)が多いですが、良質な脂質なので適量ならOK。
  5. ゆで卵 / 味玉:
    コンビニでも手軽に「追いタンパク」できる王様。
  6. サラダ(ノンオイルドレッシング or 塩):
    「海藻サラダ」「キノコのソテー」「蒸し鶏のサラダ」などを選び、まず食物繊維で血糖値の(万が一の)上昇を抑えます(ベジファースト)。

飲み会が始まる前に「プロテインを1杯飲んでおく」、あるいはコンビニで「サラダチキンバーを1本食べておく」といった「先制追いタンパク」も、非常に有効なダメージコントロール術です。

 

まとめ:飲むなら「戦略的」に飲め

「食べる筋トレ」を実践するトレーニーの飲酒戦略は、明確です。

  1. 飲む日は、トレーニングをしない「オフの日」にする。
  2. 飲む前に「プロテイン」などでタンパク質を先制補給する。
  3. 1杯目は「ハイボール」か「焼酎(水・炭酸割り)」。ビール(醸造酒)は乾杯の一口だけにする。
  4. おつまみは「枝豆・冷奴・焼き鳥(塩)・刺身」を徹底し、揚げ物・炭水化物は避ける。
  5. 飲んだアルコールと同量以上の「水(チェイサー)」を必ず飲む。
  6. 締めのラーメンは、鋼の意志で拒否する。

お酒は、あなたの努力を無に帰す「毒」にもなり得ますが、知識を持って「戦略的」につきあえば、ダメージを最小限に抑え、人生の「潤滑油」として活用することも可能です。

「筋肉食堂DELI」の食事は、もちろんアルコールとの相性は最悪です。しかし、もし飲む日の「昼食」としてDELIの(高タンパク・低脂質・低糖質な)食事を選んでおけば、夜の飲酒に備えて1日のPFCバランスを調整し、血中アミノ酸濃度を高く保つための「最高の準備」をすることができます。それもまた、賢い活用法の一つです。

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