2022.06.27

40 私、谷川の1日の「食べる筋トレ」スケジュール

(※これはID 40のコンテンツの先頭と仮定されます)

私は毎朝6時に起きて、まずバナナを食べ、コーヒーを飲みます。
体を「エネルギーたぷたぷ」の状態にしておくためです。

この「エネルギーたぷたぷ」の状態、すなわち「筋グリコーゲンが満たされた状態」でトレーニングに臨むことは、トレーニングの質を最大化する上で決定的に重要です。

詳細なモーニングルーティンと、その生理学的根拠

私の朝は、単なる習慣ではなく、体のパフォーマンスを科学的に最大化するための「儀式」です。一つひとつの行動には、明確な生理学的な理由があります。

【AM 6:00】起床:プレワークアウト栄養摂取

1. なぜ「バナナ」か?
睡眠中(約6〜8時間)に、体は肝臓に蓄えられたグリコーゲン(糖質)を消費し続けます。起床時は、肝グリコーゲンが枯渇に近い状態にあります。このままトレーニング(特に高強度の筋力トレーニング)を行うと、体はエネルギー不足を補うために、筋肉を分解してエネルギー源とする「糖新生」を活発化させてしまいます。これは、筋肉を増やしたいトレーニーにとって最悪の事態(カタボリック状態)です。

ここでバナナを摂取する理由は、バナナが「即効性の糖質(ブドウ糖・果糖)」と「持続性の糖質(デンプン)」をバランスよく含んでいるからです。

  • ブドウ糖(グルコース):即座に血糖値を上げ、インスリンの分泌を促します。インスリンは「同化ホルモン」であり、栄養素を細胞(特に筋肉)に取り込む働きをします。これにより、カタボリックな状態からアナボリック(同化)な状態へと素早く切り替えます。
  • 果糖(フルクトース):主に肝臓で代謝され、枯渇した「肝グリコーゲン」を優先的に回復させます。これにより、トレーニング中の低血糖を防ぎ、安定したエネルギー供給が可能になります。
  • カリウム:バナナに豊富なカリウムは、筋肉の収縮や神経伝達に不可欠なミネラルであり、トレーニング中の「攣り(つり)」を予防する効果も期待できます。

2. なぜ「コーヒー」か?
コーヒーに含まれる「カフェイン」は、科学的に最も証明されているエルゴジェニック・エイド(運動能力向上サプリメント)の一つです。

  • 覚醒作用:アデノシン受容体に拮抗し、中枢神経を興奮させ、眠気を取り除き、集中力を高めます。
  • 運動パフォーマンス向上:交感神経を刺激し、「闘争か逃走か」の反応を引き出します。これにより、アドレナリンが分泌され、筋力と筋持久力が向上します。
  • 脂肪燃焼の促進:ホルモン感受性リパーゼを活性化させ、体脂肪の分解(リポ解)を促進します。分解された遊離脂肪酸がエネルギー源として利用されやすくなるため、筋グリコーゲンの「節約」にもつながります。

つまり、「バナナとコーヒー」は、枯渇したグリコーゲンを補給しつつ、体脂肪をエネルギーとして使いやすくし、さらに神経系をブーストするという、トレーニング前の理想的な準備なのです。


それから血流をよくするサプリを飲んで、7時からジムに行き、1時間トレーニングを行います。
トレーニング直後には、スポーツドリンクやバナナで糖質を入れます。
意識して糖質をとるのはここまです。

【AM 6:45】血流改善サプリメント(プレワークアウト)

ジムへ行く直前に「血流をよくするサプリ」を摂取します。これは一般的に「NO(一酸化窒素)ブースター」と呼ばれるカテゴリーのサプリメントです。代表的な成分には「L-シトルリン」や「L-アルギニン」があります。

なぜ「血流」が重要か?
NO(一酸化窒素)は血管の内皮細胞から分泌され、血管を拡張させる(太くする)強力なシグナル伝達物質です。血管が拡張すると、以下のメリットがあります。

  • 栄養素のデリバリー向上:トレーニング中に、酸素、そして先ほど摂取したバナナ由来のブドウ糖を、働く筋肉へより速く、より多く送り届けることができます。
  • 老廃物の除去促進:筋肉が疲労する原因の一つである「乳酸」や「水素イオン」といった代謝副産物を、素早く血流に乗せて運び去ることができます。
  • パンプアップの強化:筋肉への血流量が増えること自体が「パンプアップ(筋肉が膨れ上がる感覚)」を生み出します。この物理的な膨張ストレスも、筋肥大のシグナルの一つであると考えられています。

このサプリメントは、トレーニングの「質」と「持続時間」をもう一段階引き上げてくれるものです。

【AM 7:00 - 8:00】高強度トレーニング

この1時間は、私にとって最も集中する時間です。プレワークアウト栄養摂取によって、体はエネルギーに満ち、神経は研ぎ澄まされています。この状態で、筋肉に「漸進性過負荷(ぜんしんせいかふか)の原則」に基づいた強烈なストレスを与えます。筋肉は、昨日よりも重い重量、昨日よりも多い回数という「生存の脅威」にさらされることで、初めて「もっと強く、もっと大きくならなければ」と適応(=筋肥大)を始めるのです。

【AM 8:00】トレーニング直後:ポストワークアウト栄養摂取

トレーニング直後は、体は「ゴールデンタイム」と呼ばれる、栄養吸収のボーナスステージに入っています。トレーニングによって筋グリコーゲンは消費され、筋肉は微細な損傷を受けています。体は必死にこれを修復しようと、栄養素(特に糖質とアミノ酸)の取り込み口である「GLUT4」や「アミノ酸トランスポーター」を筋肉の表面に大量に待機させています。

1. なぜ「スポーツドリンクやバナナ」か?
ここで必要なのは、「吸収の速い高GIの糖質」です。スポーツドリンク(マルトデキストリンやブドウ糖)やバナナ(ブドウ糖・果糖)が最適なのは、それらが消化をほとんど必要とせず、即座に血中にブドウ糖を送り込み、強力な「インスリン・スパイク(インスリンの急激な分泌)」を引き起こすからです。

インスリンは、「栄養を蓄えろ」という最強の同化ホルモンです。このインスリンの波に乗せて、消費された筋グリコーゲンを最速で回復させ、同時に、トレーニングによる「カタボリック(筋分解)」な状態を即座に停止させます。

2. 「意識して糖質をとるのはここまで」の真意
これは、「栄養素の摂取タイミング(ニュートリエント・タイミング)」を意識した戦略です。体脂肪の増減は最終的に1日の総カロリー収支で決まりますが、「いつ糖質を摂るか」は体組成(筋肉と脂肪の比率)に大きく影響します。

糖質(インスリン)が最も必要とされるのは、①活動のエネルギー源となる「トレーニング前」と、②枯渇したグリコーゲンを回復させ、カタボリックを防ぐ「トレーニング後」です。この「最も糖質が有効に使われるタイミング」に集中して糖質を摂取し、それ以外の時間帯(特に活動量が低い時間帯)の糖質摂取を抑えることで、インスリン感受性を高く保ち、糖質が体脂肪として蓄積されるリスクを最小限に抑えることができます。


帰ってきたら、グルタミンのサプリとプロテインを飲み、シャワーを浴びて、そこではじめて肉を食べる。
鶏ムネ肉とサーモン、玄米、豆腐、納豆、ブロッコリーが2度目の朝食です。
「朝っぱらから、こんなにたくさん!?」と驚くかもしれません。

【AM 8:30】ポストワークアウト・サプリメント(自宅)

1. グルタミン
グルタミンは、体内に最も豊富に存在するアミノ酸ですが、高強度トレーニングなどの強いストレス下では「条件的必須アミノ酸」となり、体内での合成だけでは需要に追いつかなくなることがあります。グルタミンを補給する目的は以下の通りです。

  • 免疫機能の維持:高強度トレーニングは一時的に免疫力を低下させますが、グルタミンはリンパ球やマクロファージといった免疫細胞の主要なエネルギー源であり、免疫力の低下を防ぎます。
  • 筋分解の抑制と消化管の健康:グルタミンは筋分解を抑制する働きがあるほか、消化管の粘膜を修復・維持するためにも不可欠です。栄養の吸収(=筋肉の材料の取り込み)は全て腸で行われるため、腸の健康はトレーニーにとって生命線です。

2. プロテイン(ホエイプロテインと推測)
トレーニング直後の糖質摂取でインスリン・スパイクを起こしたところに、最も吸収の速いタンパク質である「ホエイプロテイン」を投入します。糖質とタンパク質を同時に摂取すると、インスリンの分泌がさらに高まり、そのインスリンの強力な「運搬作用」によって、タンパク質(アミノ酸)が糖質(グルコース)と共に、最速で筋肉の細胞へと叩き込まれます。これにより、筋タンパク質の合成(MPS)が最大化されます。

【AM 9:00】「本当の」朝食(2度目の朝食)

サプリメントで「修復の開始」のスイッチを入れた後、いよいよ「本格的な修復と再構築」のための「固形食」を摂ります。ここでの食事は、一日のうちで最も重要かつ豪華な食事です。

なぜこの組み合わせか? 完璧な栄養素のシナジー

  • 鶏ムネ肉(高タンパク・低脂質):筋肉の主原料であるタンパク質を、余計な脂質なしで大量に供給します。
  • サーモン(高タンパク・高脂質):良質なタンパク質に加え、「オメガ3系脂肪酸(EPA・DHA)」を豊富に含みます。オメガ3は、トレーニングによる炎症を鎮静化させ、筋肉の回復を早める強力な抗炎症作用を持っています。また、インスリン感受性を高める効果もあり、栄養素が筋肉に取り込まれやすい体質を作ります。
  • 玄米(複合炭水化物):ポストワークアウトの糖質(第1弾)で最速のグリコーゲン補充を行いましたが、ここでは「低GIの複合炭水化物」を摂ります。玄米はゆっくりと消化・吸収されるため、インスリンの急激な上昇を抑えつつ、エネルギー(グルコース)を長時間にわたって安定的に血中に放出し続けます。これにより、日中のエネルギーレベルが安定し、かつ、数時間かけて筋グリコーゲンの「完全な回復」をサポートします。ビタミンB群や食物繊維が豊富な点も、エネルギー代謝と腸内環境をサポートします。
  • 豆腐・納豆(植物性タンパク質・発酵食品):動物性タンパク質(肉・魚)とは異なるアミノ酸プロファイルを持つ大豆タンパク質を加え、栄養の多様性を確保します。特に納豆は「納豆菌(プロバイオティクス)」を含み、腸内環境を劇的に改善します。また、「ビタミンK2」が豊富で、骨の健康にも寄与します。前述の通り、腸が健康でなければ、いくら良いものを食べても吸収できません。
  • ブロッコリー(緑黄色野菜):ビタミンC、K、葉酸、そして食物繊維の宝庫です。特に「スルフォラファン」という強力な抗酸化物質を含み、トレーニングによって発生した活性酸素を除去し、体の酸化ストレスを軽減します。

「朝っぱらから、こんなにたくさん!?」と思うかもしれませんが、これは「失ったものを補い、未来の成長のために投資する」ための、計算し尽くされた食事です。

 

しかし、ここまで大量に食べるのは朝のみ

昼と夜は職場である「筋肉食堂」で食べるし、ボリュームのある食事はなるべく朝にとるようにしています。

この「朝に重点を置く」食事戦略は、人間のサーカディアンリズム(体内時計)にも合致しています。体は朝、最もインスリン感受性が高く、活動的であり、摂取したカロリーをエネルギーとして消費し、筋肉の回復に充てる準備ができています。夜になるにつれてインスリン感受性は低下し、摂取したカロリーは体脂肪として蓄積されやすくなります。したがって、一日の総カロリーが同じでも、「いつ食べるか」によって体組成は大きく変わるのです。


ちなみに、昼食は、「鶏ムネ肉のソテー」と玄米、卵白。
夕食は「牛ヒレ肉のステーキ」とブロッコリー。

昼食も、タンパク質(鶏ムネ肉、卵白)と複合炭水化物(玄米)という、クリーンなエネルギー源を引き続き補給します。卵白は、ほぼ純粋なタンパク質(アルブミン)であり、脂質を一切含まないため、カロリーを抑えつつタンパク質量を稼ぐのに最適です。

夕食は、炭水化物を玄米からブロッコリー(野菜)に切り替えています。これは、夜間は活動量が低下し、エネルギー源としての糖質の必要性が低いため、糖質の摂取を控え、インスリン分泌を抑える戦略です。その代わり、タンパク質源として「牛ヒレ肉」を選びます。牛ヒレ肉は、鶏ムネ肉と同様に高タンパク・低脂質ですが、鉄分、亜鉛、そして「クレアチン」を豊富に含みます。クレアチンは筋肉の瞬発的なエネルギー源(ATP-CP系)となり、トレーニングの強度をもう一段階引き上げてくれるため、トレーニーには必須の栄養素です。就寝中に、これらの栄養素がゆっくりと体に吸収され、深い回復が促されるのです。

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