2022.07.14
46 締め切りを決めないと人は動かない。 体づくりは期限を決めてこそ達成できる
締め切りを決めないと人は動かない。体づくりは期限を決めてこそ達成できる
ここまで、体づくりを継続するためには、体重ではなく、見た目の変化にフォーカスすることが大切だとお伝えしました。
継続にあたって、もう1つ大事なことがあります。
それは、「いつまでに」という期限を設定することです。
私がジムのトレーナーを務めていたころ、「痩せたいんです」という人たちが駆け込んでくる時期はだいたい決まっていました。
まずは2月から4月くらいの春先。
「今年の夏は水着になりたいな。もう春だから、そろそろ始めないといけないな」と気づいた人たちです。
また、人間は、お正月や、新年度である4月には、一念発起して何かを始めたくなるようで、この時期もジムの入会者がぐんと増えます。
そんな人たちに私が必ず言うのは、
「いつまでに理想の体になりたい、という期限を決めましょう」ということです。
もちろん、1カ月やそこらでダイエットはできないので、無理な目標設定は避けて、たとえば3カ月を目途にします。
だから4月に入会した人には、こんなふうにアドバイスします。
「いまのあなたは、エンジンの小さい軽自動車のようなものです。
でもいまは4月のはじめだから、4月、5月、6月と3カ月頑張れば、軽自動車からポルシェになって、7月の海開きには堂々と水着になれますよ」
読者のみなさんも、まずは3カ月という期限を設定してみてください。
▼期限を決めないと途中で挫折することに
なぜ、期限が必要なのかと言えば、そうしなければ続かないからです。
仕事も同じではないでしょうか。
人に仕事を頼むとき、いつまでにという期限を設定しないと、その仕事は常に後回しにされ続け、一向に終わらないはずです。
貯金だってそう。
どれくらい貯めようかを決めずに節約を始めても、途中で挫折することになるだでしょう。
▼スモールゴールを設定して、定期的に成果を確認する
「3カ月も続けられるかどうか、自信がない」という人は、「まず3週間続ける」という小さなゴールを設定しよう。
それは、3週間でもある程度の手応えは感じられるからです。
手応えを感じられると、それが次のモチベーションになって、もう3週間続けられる。
それを繰り返していると徐々に習慣化され、自然と継続できるようになるはずです。
継続のためには、
3日、3週間、3カ月と、「3」刻みを意識するといいと言われています。
この「333の法則」を信じて、体づくりを継続してほしいと思っています。
★POINT
期限のほかに、継続のための「ご褒美」を設定するのもアリ。
締め切り(期限)が行動を生む:目標設定の心理学【専門的補足】
元の記事では、体づくりを成功させるために「いつまでに」という期限を設定すること、そして「3週間」や「333の法則」といったスモールゴール(中間目標)を設けることの重要性が述べられています。これは、目標達成における行動科学および心理学の根幹をなすテクニックです。ここでは、なぜ期限がそれほど強力なのか、そして「3週間」や「333の法則」が持つ意味を専門的に解説します。
▼なぜ「期限」がないと人は動けないのか?
「いつか痩せたい」「そのうち筋肉をつけたい」という目標が達成されることは決してありません。元の記事で仕事や貯金の例が挙げられている通り、期限のない目標は「願望」に過ぎず、「計画」ではないからです。これにはいくつかの心理学的な理由があります。
1. パーキンソンの法則(Parkinson's Law):
これは「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則です。体づくりに置き換えれば、「期限がなければ、体づくりというタスクは永遠に開始されない(あるいは常に後回しにされる)」ということです。「夏までに水着を着る」という明確な締め切り(デッドライン)があるからこそ、人は逆算して「今(4月)始めなければならない」という緊急性を認識できます。
2. 現在志向バイアス(Present Bias):
人は一般的に、「未来の大きな報酬(例:3ヶ月後に手に入る引き締まった体)」よりも、「現在の小さな報酬(例:今すぐ食べられるケーキや、筋トレをサボる快適さ)」を過大評価し、優先してしまいます。明確な「期限」を設定することは、この未来の報酬を「現実的な目標」として認識させ、現在の誘惑に打ち勝つ意志力をサポートする役割を果たします。
3. ゴール設定理論(Goal-Setting Theory):
心理学者のエドウィン・ロックらが提唱した理論で、目標が行動を動機付けるプロセスを示しています。最も効果的な目標設定は「SMARTの法則」に従うとされています。
- Specific(具体的に):何を達成するのか(例:「痩せる」ではなく「体脂肪率を15%にする」)
- Measurable(測定可能に):進捗を測る(ID 45の「記録」がこれに当たります)
- Achievable(達成可能に):現実的な目標か(例:1ヶ月で20kg減などは非現実的)
- Relevant(関連性):自分の価値観と関連しているか(ID 44の「理想の体」イメージ)
- Time-bound(期限を設けて):いつまでに達成するか
元の記事の「3ヶ月でポルシェ(のような体)になる」という目標は、まさにこの「T(期限)」を設定する行為そのものです。期限がなければ、他の4つの要素が揃っていても計画は機能しません。
▼スモールゴール(3週間)の科学的根拠
「3ヶ月」という最終期限(デッドライン)は重要ですが、それだけでは遠すぎて現在志A向バイアスに負けてしまいます。そこで「3週間続ける」というスモールゴール(中間目標)が極めて有効に機能します。
習慣化の「初期フェーズ」としての3週間:
「習慣化には21日(3週間)かかる」という説が有名ですが、近年の研究(ロンドン大学の研究など)では、行動が完全に無意識の「習慣」になるまでには平均66日(約2ヶ月強)かかるとも言われています。しかし、この説は「3週間」という目標を否定するものではありません。
体づくり(食事管理やトレーニング)のような複雑な行動は、最初の3週間が最も離脱率が高い「障壁の期間」です。この期間は、行動の「開始コスト」が非常に高く、多くの意志力(ウィルパワー)を必要とします。この最初の3週間を「スモールゴール」として設定し、達成できると、以下の2つの大きな報酬が得られます。
- 自己効力感(Self-efficacy)の獲得: 「自分にも3週間できた」という成功体験が、「このまま続けられるかもしれない」という自信(=自己効力感)を生み出します。
- 初期の「手応え」: 3週間「食べる筋トレ」を実践すると、体重の数字以上に「むくみが取れて顔がスッキリした」「寝起きが良くなった」「トレーニングが少し楽になった」といったポジティブなフィードバック(手応え)を感じられるようになります(ID 45の「変化の実感」)。
この「自己効力感」と「手応え」こそが、次の3週間、そして3ヶ月の継続を支える燃料となります。
▼「333の法則」の段階的意味
元の記事にある「3日、3週間、3ヶ月」は、習慣化のプロセスを非常にうまく捉えています。
- 3日(最初の障壁): 最も挫折しやすい時期。「食べない筋トレ」を「食べる筋トレ」に変えるなど、生活パターンを根本的に変えようとするため、脳が強く抵抗します。「面倒くさい」「明日からにしよう」という誘惑がピークに達します。ここを意志力で乗り越えることが第一関門です。
- 3週間(行動の定着期): 上述の通り、行動が生活の一部として組み込まれ始め、「やらないと気持ち悪い」という感覚が出始める時期です。自己効力感が高まり、スモールゴール達成の喜びを感じられます。
- 3ヶ月(結果の明確化): 体が目に見えて変化する時期です(ID 42の「筋肉は少しずつしかつかない」が、3ヶ月蓄積すると明確な差になる)。ID 44で述べた「見た目」が明らかに変わり、ID 45の「記録」(写真や測定値)にも顕著な差が現れます。ここまで来ると、行動はほぼ「習慣」となっており、強い内的動機付け(やること自体が喜び)によって継続が容易になります。
▼「ご褒美」の適切な使い方(外的動機付け)
元の記事の最後に「ご褒美(報酬)を設定するのもアリ」とあります。これは「外的動機付け」と呼ばれ、特に習慣化の初期フェーズ(最初の3日〜3週間)において有効です。
ただし、注意点として、「食べる筋トレ」の目的に反する報酬(例:暴飲食)を設定するのは逆効果です。報酬は、「3週間達成したら、新しいトレーニングウェアを買う」「3ヶ月達成したら、プロに写真を撮ってもらう」など、体づくりをさらに促進するようなものが望ましいです。(これを心理学で「報酬の設計」と呼びます)
★POINT(補足)
期限なき目標は「願望」である。期限とスモールゴールを設定して初めて、それは「計画」となり、達成可能な「現実」となる。
「食べる筋トレ」をいつ始めるか?「今」です。そして、最初のゴールを「3日後」、次のゴールを「3週間後」、最終的なゴールを「3ヶ月後(例:〇月〇日)」と設定してください。その期限が、あなたの行動を強力に後押しするはずです。
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