2022.06.27

29 リーンバルク時の摂取カロリーはどのくらい?

リーンバルクのためのカロリー計算と食事

【リーンバルク完全ガイド】摂取カロリーの全計算ステップと「有酸素運動」の真実

前項(22 「食べる筋トレ」の基本。 たくさん食べる時期と脂肪を削ぎ落す時期を交互に繰り返せ)で、効率的に筋肉を成長させ、脂肪の増加を最小限に抑える戦略として「リーンバルク」をおすすめしました。

リーンバルクの成否は、その「カロリー設定」にかかっていると言っても過言ではありません。「ダーティバルク(何でも食べて太る方法)」とは異なり、リーンバルクには緻密なカロリーコントロールが求められます。
では、一体どの程度のカロリーを摂取すれば、脂肪を増やさずに筋肉だけを効率よく増やすことができるのでしょうか。

リーンバルクをするときの摂取カロリーの決め方は、人それぞれ基礎代謝、筋肉量、日々の活動量が全く違うため、一概に「このカロリーを摂れ」とは言えません。


元の記事では、平均的な成人男性の1日に必要なカロリー(約2700kcal)を基準に、その1.2~1.7倍を目安としています。

これは大まかな指針としては分かりやすいですが、より科学的かつ精密に「あなた専用」のリーンバルク・カロリーを設定するためには、もう一歩進んだ計算が必要です。

この記事では、リーンバルクを成功させるための「摂取カロリーの算出法」から、「増量中の有酸素運動の是非」というトレーニーの永遠の悩みまで、専門的に徹底解説します。

 

1. リーンバルクの「カロリー設定」3ステップ

「2700kcalの1.2倍」という計算は、あなたの現在の「体重」や「活動量」が考慮されていません。体重100kgの人と60kgの人、デスクワーカーと建設作業員では、必要なカロリーが全く異なります。

そこで、個々人に合わせたリーンバルクのカロリー設定を、以下の3ステップで行います。

ステップ①:あなたの「基礎代謝量 (BMR)」を知る

基礎代謝量 (BMR: Basal Metabolic Rate) とは、あなたが何もしないで(体温維持、呼吸、心拍など)生命を維持するために最低限必要なエネルギー量のことです。
これは性別、年齢、身長、体重によって決まります。ネット上の「BMR 計算サイト」で、あなたの数値を入力すれば1分で推定値が分かります。

(例:30歳男性、身長175cm、体重70kgの場合、BMRは 約1700 kcal)

ステップ②:あなたの「TDEE(総エネルギー消費量)」を算出する

TDEE (Total Daily Energy Expenditure) とは、基礎代謝量(BMR)に、あなたの1日の活動(仕事、通勤、トレーニングなど)で消費するエネルギーを加えた、1日の総消費カロリーです。これこそが、あなたの「太りも痩せもしない」維持カロリーとなります。

【TDEEの計算式】 TDEE = BMR × 活動レベル指数

[活動レベル指数]

  • 1.2: ほぼ運動しない。デスクワーク中心。
  • 1.375: 週に1〜2回の軽いトレーニング。
  • 1.55: 週に3〜5回の中程度のトレーニング。(多くのトレーニーが該当)
  • 1.725: 週6〜7回のハードなトレーニング、または肉体労働。
  • 1.9: 非常にハードなトレーニング(アスリートなど)、かつ肉体労働。

(例:BMRが1700kcalの男性が、週4回ジムに通う場合)
TDEE = 1700 kcal × 1.55 = 約 2635 kcal

この 2635 kcal が、彼の「維持カロリー」となります。元の記事の「2700kcal」という数字は、これに近いですね。

ステップ③:リーンバルクの「目標カロリー」を設定する

いよいよ本題です。筋肉を増やす(アナボリック)ためには、この維持カロリー(TDEE)を上回るカロリー(カロリーサープラス)が必要です。

しかし、増やしすぎれば脂肪になります。リーンバルクで目指すべき「黄金比」は、以下の通りです。

リーンバルク目標カロリー = TDEE + 200〜500 kcal

なぜこの範囲なのか?

  • +200 kcal (保守的なリーンバルク): 脂肪の増加をほぼゼロに抑え、ゆっくりと着実に筋肉を増やしたい人向け。
  • +500 kcal (積極的なリーンバルク): ある程度の脂肪増加は許容しつつ、筋肥大のスピードを最大化したい人向け。

初心者はまず「TDEE + 300 kcal」あたりから始めるのが最も安全かつ効率的です。

(例:TDEE 2635 kcal の人の場合)
目標カロリー = 2635 + 300 = 約 2935 kcal

これが、元の記事の「1.2倍(3240kcal)」や「1.7倍(4590kcal)」よりも、はるかにパーソナライズされた、現実的なリーンバルクの開始カロリーとなります。

 

2. モニタリング:正しいカロリーか見極める方法

この「TDEE + 300 kcal」も、あくまで「推定値」です。本当にリーンバルクがうまくいっているかを確認し、微調整する必要があります。

見るべき指標は、体重増加の「ペース」です。

リーンバルクの理想的な体重増加ペース:
「1ヶ月あたり、現在の体重の 0.5% 〜 1.0%」

(例:体重70kgの人なら、1ヶ月に 350g 〜 700g の増加が目安)

このペースより速すぎる場合(例:1ヶ月に2kg増)、それは筋肉の合成スピードを上回っており、増えた分の多くは「体脂肪」です。その場合は、目標カロリーを100〜200kcal減らします。

逆に、このペースで体重が増えない(または横ばい)場合は、カロリーが不足しています。目標カロリーを100〜200kcal増やしてください。

(※毎日の体重変動に一喜一憂せず、1週間の「平均体重」で比較することが重要です)

 

3. 「力士のような生活」の神話と真実(有酸素運動は敵か?)

元の記事では「増量中は力士のような生活が理想」とし、「余計なカロリーを消費しないよう、有酸素運動などは控える」とあります。

これは、「せっかく稼いだカロリーサープラス(余剰分)を、有酸素運動で消費してしまったら、増量の意味がなくなる」という観点からは、一理あります。

ただし、この考え方は、現代のリーンバルク戦略においては「古い常識」となりつつあります。

確かに、マラソンのような高強度・長時間の有酸素運動を毎日行えば、筋トレの回復を妨げ(AMPKとmTORの経路干渉)、カロリーも消費しすぎるため、筋肥大にはマイナスです。

しかし、「戦略的な(低〜中強度の)有酸素運動」は、リーンバルクをむしろ「より効率的に(リーンに)」進めるための強力な武器となるのです。

リーンバルク中に「有酸素運動」を行うべき3つの理由

理由①:インスリン感受性の維持(最重要)
インスリンは、食べた栄養素(糖やアミノ酸)を細胞に送り込む「運び屋」ホルモンです。リーンバルクでカロリー(特に炭水化物)を多く摂取し続けると、インスリンが働きすぎになり、細胞の反応が鈍くなる「インスリン感受性の低下」が起こりがちです。
感受性が低下すると、栄養素は「筋肉」に行き渡らず、「脂肪細胞」に優先的に蓄積されやすくなります。これが「バルクアップ=太る」の原因です。
適度な有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギング)は、このインスリン感受性を高く維持するのに非常に効果的です。つまり、食べたカロリーが脂肪ではなく、筋肉に正しく分配されるように「体の質」を保ってくれるのです。

理由②:心肺機能(健康)の維持
体重を増やす(バルクアップ)行為は、それ自体が心臓や血管に負担をかけます。将来の健康のため、また、筋トレ中のセット間の回復力(息切れ)を高めるためにも、心肺機能の最低限のメンテナンスは不可欠です。

理由③:PFCデリバリー(栄養輸送)の向上
有酸素運動は全身の血流を改善します。血流が良くなれば、食べたタンパク質や炭水化物が、毛細血管を通じて筋肉の隅々まで効率よく「デリバリー」されるようになります。これも筋肥大に有利に働きます。

【結論】
「力士のように全く動かない」のは、インスリン感受性を低下させ、不健康に太るリスクを高めます。リーンバルク中であっても、週に2〜3回、30分程度のウォーキングや軽いジョギング(LISS: 低強度定常状態トレーニング)を取り入れることは、あなたのバルクアップを「よりリーンに」成功させるための賢明な戦略です。

 

まとめ:科学的に計算し、賢く管理する

リーンバルクを成功させる鍵は、曖昧な感覚や古い常識に頼ることではありません。

  1. 「TDEE(維持カロリー)」を算出し、「+200〜500 kcal」という科学的根拠のあるサープラスを設定する。
  2. 「月あたり体重の0.5〜1.0%増」のペースを守れているか、体重計で厳密にモニタリングし、微調整を続ける。
  3. 「有酸素運動=悪」と決めつけず、インスリン感受性維持のために、戦略的に(低強度で)取り入れる。

もちろん、これら「TDEE + 300 kcal」といった緻密なカロリー計算と、その中身(PFCバランス)を毎日自炊で管理するのは、非常に骨の折れる作業です。

「筋肉食堂DELI」のお弁当は、まさにこのリーンバルク戦略をサポートするために設計されています。例えば、「BULK UP(増量用)」や「MAINTAIN(維持用)」のメニューを組み合わせることで、あなたが計算した「TDEE + 300 kcal」といった目標カロリーに、極めて簡単に、かつ最高のPFCバランスで到達することを可能にします。

面倒な計算と調理から解放され、あなたは最も重要な「トレーニング」と「モニタリング」に集中できるのです。

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