2022.06.27
31 トレーニング後の 「タンパク質+糖質」が最強である理由
【徹底解説】トレーニング後の「タンパク質+糖質」が最強のタッグである科学的理由
前項(30 どう食べるかだけでなく「いつ食べるか?」も重要。タンパク質は、摂取のタイミングによって効果に圧倒的な差がつく)では、タンパク質摂取のタイミングについて、「ゴールデンタイム(トレ後30分)」という常識よりも、「1日の総量と均等配分」、そして「トレーニング前の摂取」が重要である可能性を解説しました。
そして、トレーニング前のタンパク質摂取と「一緒に、バナナやオレンジジュース、おにぎりなどの糖質も摂取したい」と元の記事は述べています。これは25 糖質断ちはトレーニーの敵! 簡単に痩せようと思うな!で解説した通り、トレーニングのパフォーマンスを高めるための「ガソリン(筋グリコーゲン)」を補給する上で非常に重要です。
では、トレーニング「後」についてはどうでしょうか。
元の記事は、「糖質はトレーニング直後にもとったほうがいい」と結論づけています。これは減量期でも(量を調整した上で)同じです。なぜなら、トレーニング後にタンパク質と糖質を一緒にとることで、筋肉の成長が促進されるからです。
この記事では、なぜこの「タンパク質+糖質」という組み合わせが、トレーニング直後において「最強のタッグ」と言えるのか、その鍵を握るホルモン「インスリン」の働きから、科学的かつ徹底的に解説します。
1. 「インスリン」の二面性:トレーニング直後は「最強の味方」
23 減量期は、血糖値の急上昇に気をつけろ!の記事では、減量期において「インスリン」をいかにコントロールするかが重要だと解説しました。安静時に高GI値の食品を食べて血糖値が急上昇すると、インスリンは余った糖を「脂肪細胞」に蓄えるように命令する、というのが主な内容でした。
このため「インスリン=太るホルモン」というイメージが強いかもしれません。しかし、インスリンは本質的に「体内にエネルギーを貯蔵する(アナボリック)ホルモン」です。
重要なのは、インスリンが命令したとき、「どの細胞のドアが開いているか」です。
ハードなトレーニング(特に高強度の筋トレ)を行った直後の体は、平常時とは全く異なる、特殊な状態になっています。それは、「筋肉細胞」のドアが、栄養を激しく求めて「全開」になっている状態です。
このタイミングで分泌されるインスリンは、脂肪細胞ではなく、**最優先で「筋肉細胞」**に栄養を送り込む「最強の味方(アナボリックホルモン)」として機能するのです。
2. なぜ「糖質」が必要か? 2つの重要な役割
トレーニング後にタンパク質(プロテインシェイクなど)だけを摂取する人もいますが、筋肉の成長を最大化する上では、糖質を同時に摂取することが強く推奨されます。それには2つの明確な理由があります。
役割①:筋グリコーゲンの迅速な「再充填(リロード)」
筋トレの主要なエネルギー源は、筋肉内に貯蔵された「筋グリコーゲン」です(25 糖質断ちはトレーニーの敵! 簡単に痩せようと思うな!参照)。トレーニングによって、このガソリンは大きく消費(枯渇)されます。
トレーニング後に糖質を摂取する第一の目的は、この空になったガソリンタンクに、迅速に「再充填(リロード)」することです。
このリロードが早ければ早いほど、
- 筋肉の「回復」が早まる。
- 翌日以降のトレーニングの「パフォーマンス」が維持・向上する。
役割②:インスリン分泌による「アナボリック・ドライブ」の誘発
これが、タンパク質単体よりも「タンパク質+糖質」が優れている最大の理由です。
タンパク質(アミノ酸)もインスリン分泌を刺激しますが、「糖質(ブドウ糖)」こそが、インスリン分泌を最も強力に、かつ迅速に刺激する栄養素です。
トレーニング直後にあえて糖質を摂取し、意図的に「インスリンスパイク」を起こすこと。これこそが、筋肉を成長させるための「アナボリック・ドライブ」の引き金となります。
3. 「タンパク質+糖質」の相乗効果(シナジー)
では、インスリンが分泌されると、タンパク質(アミノ酸)にとって、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
A) 筋肉への「アミノ酸輸送」を加速させる(mTORの活性化)
インスリンの重要な役割の一つが、血流に乗っている栄養素(ブドウ糖やアミノ酸)を、細胞内に「運べ!」と命令することです。
トレーニング直後のインスリンは、筋肉細胞のドア(専門的にはGLUT4やアミノ酸トランスポーター)を全開にし、血中のアミノ酸(タンパク質の原料)を、まるで掃除機のように筋肉細胞内へと吸い込ませます。
さらに、インスリンとアミノ酸(特にロイシン)が組み合わさることで、筋肉の合成(MPS)を開始させる主要なシグナル伝達経路である「mTOR(エムトール)」が強力に活性化されることが分かっています。
タンパク質だけを摂るよりも、糖質を加えてインスリンを分泌させたほうが、筋肉の合成スイッチがより強く、深く押されるのです。
B) 筋肉の「分解(カタボリック)」を強力に停止させる
トレーニングは「合成(アナボリック)」のシグナルであると同時に、体にとっては大きな「ストレス」でもあります。このストレスに対抗するため、体内では「コルチゾール」のようなストレスホルモンが分泌され、筋肉の「分解(カタボリック)」も同時に進行しています。
筋肉を成長させるためには、この「分解」をいかに早く止めるかが鍵となります。
そして、インスリンは、このコルチゾールの働きを抑制し、筋肉の分解(MPB: 筋タンパク質分解)を停止させる「超強力なアンチ・カタボリックホルモン」でもあります。
トレーニング後の「タンパク質+糖質」摂取は、
- タンパク質で「材料」を補給し、
- 糖質(インスリン)で「合成(mTOR)」のアクセルを踏み、
- 同時に糖質(インスリン)で「分解」のブレーキを踏む
【筋肥大の方程式】
純粋な筋肉の成長 = 筋タンパク質合成 (MPS) - 筋タンパク質分解 (MPB)
「タンパク質+糖質」の組み合わせは、この式の「MPS」を最大化し、「MPB」を最小化するため、結果として「純粋な筋肉の成長」が最強になる、というわけです。
4. 実践編:何を・どれだけ・いつ摂るか
では、具体的にどう摂取すれば良いのでしょうか。
① タイミング(When)
30 どう食べるかだけでなく「いつ食べるか?」も重要。タンパク質は、摂取のタイミングによって効果に圧倒的な差がつくで解説した通り、「30分」にこだわる必要はありません。トレーニング前(1〜2時間前)に食事を摂っている場合、トレーニング終了後、「1〜2時間以内」にこのP+Cの食事を摂取できれば理想的です。これがプロテインシェイクであっても、しっかりとした「食事(例:筋肉食堂DELIの弁当)」であっても構いません。
② 炭水化物(What Carbs)
トレーニング直後は、枯渇したグリコーゲンを迅速に補充し、インスリンを素早く分泌させるために、あえて「吸収の早い」高GI〜中GIの炭水化物が好まれます。
元の記事にある「バナナ、オレンジジュース、おにぎり(白米)」は、まさに理想的な選択です。他にも、和菓子(大福、団子など脂質が低いもの)や、トレーニー専用の「マルトデキストリン」「クラスターデキストリン」などの粉末糖質も非常に有効です。
③ タンパク質(What Protein)
最も吸収が早く、mTORを刺激する「ロイシン」が豊富な**「ホエイプロテイン」**が、このタイミングでは最適解とされています。
④ 量と比率(How Much)
目的(増量期か減量期か)によりますが、一般的なガイドラインは以下の通りです。
- タンパク質 (P): 20g 〜 40g
- 炭水化物 (C): 40g 〜 80g (タンパク質の1〜3倍量)
(例:ホエイプロテイン30g + バナナ2本、 または プロテイン30g + おにぎり2個)
減量期であっても、このタイミングの糖質は「筋肉の回復」のために優先的に使われるため、1日の炭水化物予算の中から、30〜40g程度はここに割り当てることを強く推奨します。
まとめ
トレーニング後の体は、栄養素に対して「スポンジのように」敏感になっています。この絶好の機会を逃してはいけません。
タンパク質だけを摂取するのは、いわば「建設作業員(アミノ酸)」だけを現場に送るようなもの。それでは作業効率は上がりません。
「タンパク質(作業員)」と「糖質(インスリンという名の”現場監督” 兼 ”重機のエネルギ-”)」を同時に送り込むこと。これにより、現場監督(インスリン)が「作業員を現場(筋肉)に入れ!」「解体をやめろ!」「合成を急げ!」と号令をかけ、さらに重機(グリコーゲン)の燃料も満タンにするため、筋肉の修復・成長が最も効率よく、爆発的に進むのです。
「筋肉食堂DELI」のお弁当は、高品質なタンパク質(平均30g以上)と、計算された炭水化物(玄米など)が「最強のタッグ」としてパッケージングされています。トレーニング後の「完璧なアナボリック・ミール」として、これ以上の選択肢はないでしょう。
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