2022.07.14
47 筋トレを習慣化する2つのコツ
筋トレを習慣化する2つのコツ
ここまでは、本書で紹介してきた食事法「食べる筋トレ」を継続する方法についてお伝えしてきました。
最後に、トレーニングそのものを継続する方法についても触れておこうと思います。
筋トレを始めると、誰しも最初のうちはモチベーションが高いです。
2時間も3時間もトレーニングしたりして、「やったぞ」という充実感に浸る。
しかしそれで満足してしまって、1週間しか続かなければ、結局体は変化しません。
大事なのはスタートして1〜2週間の負荷ではなく、この先何年、何十年もずっと筋トレを継続することです。
筋トレを続けるために一番良いのは、習慣にしてしまうことです。
たとえば歯磨きが続かない、という人はいないと思います。
毎日磨かないと気持ちが悪いはずです。
それは習慣になっているからなのです。
運動も同じで、習慣にしてしまえば苦にならないどころか、しないと気持ちが悪くなってくる。
▼すでに定着している習慣とセットにする
筋トレを習慣化するコツは2つ。
■ 1つめは、すでに習慣になっていることに、新しく習慣にしたいことをセットにすることです。
たとえば、毎朝シャワーを浴びるのが習慣なら、その前にトレーニングをする。
毎晩寝る前に入浴する人なら、トレーニングをしてからでなければ風呂に入らないと決める。
このように、いつもの習慣とトレーニングをワンセットにするのです。
毎日のルーティンに組み込んでしまえば、無理なく続けられるはずです。
▼軽い負荷からはじめ、徐々に強度を上げる
■もう1つの継続のコツは、「最初から飛ばさず、徐々に強度を上げていく」ことです。
特にこれまで運動習慣がなかった人は、まずはウォーキングから始めます。
ウォーキングに慣れたらランニングにする。
ランニングもラクになってきたら筋トレを始める。
こんなふうに体力がつくのに応じて運動の強度を上げていくと、「きつい、しんどい、もうイヤだ」とはなりにくいです。
もちろん「やるぞ」と決めたときの勢いを利用してジムに入会してしまうというのも1つの手ですが、継続する確率が高いのはラクな運動からスタートするほうです。
毎朝、会社のひと駅手前で降りて歩く。
エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を昇り降りする。
それが自分にとっての当たり前になってきたら、
今度は電車のなかでは座席が空いていても座らない、
駅の階段は一段飛ばしで上るようにする。
こんなふうに、ゆるい運動からスタートするのが挫折しないコツです。
▼自己流筋トレに注意。最初はプロの指導を
最後に、これから筋トレを始めようと考えている人に、どうしても伝えておきたいことがあります。
それは、筋トレを始めるなら、最初のうちはプロの指導を受けるべきだということです。
ジムに入らなければいけないわけではないが、私は筋トレ初心者が自己流でトレーニングをするのはちょっと危険だと思っています。
最近は、無人のフロアにトレーニングマシンが並んでいて、それを24時間使い放題、というようなジムが増えた。
YouTubeには筋トレの指導の動画もたくさんあるので、それを見ながら自宅でトレーニングもできる。
しかし、できれば最初の1〜2回は、プロのトレーナーの指導を受けて、正しいフォームを身につけたほうがいい。
最初に間違ったフォームが身についてしまうと、それを直すのは大変です。
しかも、間違ったフォームでは効果的に筋肉がつかないし、ケガの原因にもなります。
パーソナルトレーニングの指導料は安くはないですが、それで正しいフォームが身につくのであれば、自分への投資として決して惜しくはないと思います。
★POINT
筋トレの効果は1日にしてならず。じっくり着実に取り組もう。
第5章「食べる筋トレ」を未来の習慣にするために【専門的補足】
この記事は、「食べる筋トレ」という一連の知識体系のエピローグ(結び)です。元の記事の核心的なメッセージ「『知っている』と『やっている』は全く違う」は、体づくりだけでなく、あらゆる自己変革における最も重要な真実です。ここでは、なぜそのギャップが生まれるのか、そしてそのギャップを乗り越え、得た知識を「実践」そして「習慣」に変えるための具体的な戦略を、行動科学の観点から詳細に解説します。
▼「知っている」のに「できない」:知識と行動のギャップ(Knowing-Doing Gap)
「食べる筋トレ」の理論(42 筋肉は少しずつしかつかない〜46で補足した栄養学、生理学、心理学)を理解した今、多くの読者が「なるほど、理論はわかった」と感じているかもしれません。しかし、その知識を行動に移せないのには、明確な理由があります。
1. 現状維持バイアスとホメオスタシス(恒常性):
人間の脳と体は、良くも悪くも「今の状態を維持しよう」とする機能(ホメオスタシス)が備わっています。新しい行動(=食べる筋トレの実践)は、脳にとって「変化=ストレス」と認識されます。たとえそれが合理的で正しい知識(例:「タンパク質を摂るべき」「記録すべき」)であっても、脳は無意識に「面倒くさい」「明日からでいい」という抵抗(=現状維持バイアス)を生み出し、行動を妨げます。
2. 意志力(ウィルパワー)の枯渇:
「食べる筋トレ」を実践するには、食事を選び、トレーニングの時間を確保し、記録をつけるなど、多くの「決断」が必要です。心理学の研究によれば、人間の意志力(決断力)は、スマートフォンのバッテリーのように朝が満タンで、使うたびに消耗していきます。仕事や人間関係で意志力を使い果たした夜に、「さあ、これから食事の準備と筋トレだ」と行動するのは非常に困難です。「知っていてもできない」のは、意志が弱いからではなく、意志力に頼る戦略自体が間違っている可能性が高いのです。
3. 完璧主義の罠(All-or-Nothing Thinking):
「食べる筋トレ」の知識を完璧に実践しようとするあまり、「今日はタンパク質が足りなかったから、もう今週は失敗だ」「筋トレを1日休んだから、もうダメだ」と、0か100かで考えてしまうのが完璧主義の罠です。この思考は、1回の小さな失敗を、全体の「挫折」へと拡大解釈させ、行動を完全に停止させてしまいます。
▼ギャップを埋めるための3つの戦略:「習慣化」への架け橋
「知っている」を「やっている」に変えるには、意志力に頼るのではなく、「仕組み(システム)」と「習慣」に落とし込む必要があります。
戦略1:スモールスタート(完璧主義の排除)
挫折する人の多くは、最初からすべて(食事、トレーニング、記録)を完璧にやろうとします。重要なのは「継続」であり、「完璧」ではありません。
「2分間ルール」(by ジェームズ・クリアー):
新しい習慣を始めるときは、「2分以内で終わる」ように設定するという考え方です。「食べる筋トレ」に応用してみましょう。
- 「毎日1時間の筋トレ」が目標なら、最初の1週間は「トレーニングウェアに着替える」(2分)だけを実践します。
- 「毎日食事を記録する」が目標なら、「アプリを起動して水だけ記録する」(30秒)から始めます。
- 「タンパク質を摂る」が目標なら、「まず朝食に卵を1個追加する」(1分)だけを実践します。
バカバカしいほど簡単な「行動のきっかけ」を作ることが、脳の抵抗(現状維持バイアス)を最小限に抑え、行動を開始(=「やっている」状態)させる最も効果的な方法です。
戦略2:習慣のループ(Habbit Loop)を設計する
チャールズ・デュヒッグが提唱する通り、習慣は「きっかけ → ルーティン → 報酬」のループで形成されます。意志力に頼るのではなく、このループを意識的に設計します。
- きっかけ(Trigger): 既存の習慣に結びつけます。「朝、歯を磨いたら」(既存の習慣)→「プロテインを飲む」(新しいルーティン)
- ルーティン(Routine): 行動そのものです(例:プロテインを飲む)。
- 報酬(Reward): 行動直後の小さな「喜び」です。プロテインを飲んだら、「カレンダーに大きな丸をつける」「好きな音楽を1曲聴く」など。この即時的な報酬が、脳に「この行動は快感だ」と学習させます。(46 締め切りを決めないと人は動かない。 体づくりは期限を決めてこそ達成できるで触れた「ご褒美」の短期版です)
45 放っておくと、人は見たいところだけしか見なくなる。 スマホを使って、客観的に変化を記録せよで述べた「記録」は、それ自体が「報酬」として機能します。記録を見て「今週も続けられた」と実感すること(=達成感)が、次の行動への「きっかけ」となるのです。
戦略3:アイデンティティ(自己認識)の変革
最も強力な戦略は、「自分はこういう人間だ」という自己認識(アイデンティティ)を変えることです。
「痩せたい(結果)」や「筋トレをしなければ(プロセス)」と考えているうちは、行動は義務のままです。そうではなく、「私は、自分の体を管理し、健康的な食事を選ぶ人間だ」というアイデンティティを持つことです。
このアイデンティティは、日々の小さな「スモールスタート」の積み重ねによって証明されます。卵を1個追加するたびに、あなたは「健康的な食事を選ぶ人間」としての証拠を1つ積み上げていることになります。この自己認識が確立されれば、行動は「努力」から「当たり前」へと変わります。
▼「食べる筋トレ」の先にあるもの
元の記事で述べられている「2〜3ヶ月も続ければ」訪れる変化(男性なら厚い胸板、女性なら血行改善)は、すべて「実践(Doing)」した者だけが手に入れられる結果です。
これまでの章で学んだ知識を思い出してください。
- 42 筋肉は少しずつしかつかない(超回復): 知っていても、トレーニングと栄養摂取を「実践」しなければ筋肉はつきません。
- 43 体重に惑わされると、道に迷うことに。 変化を実感したいなら、体脂肪を計測せよ!(体組成): 知っていても、体重計の数字に一喜一憂し、「実践」を止めればリバウンドします。
- 44 体重なんてどうでもいい。 結果を出したいなら、 とにかく「見た目」にこだわれ(見た目): 知っていても、「実践」して体が変わらなければ、理想のイメージはただの空想です。
- 45 放っておくと、人は見たいところだけしか見なくなる。 スマホを使って、客観的に変化を記録せよ(記録): 知っていても、写真や測定を「実践」しなければ、脳のバイアスに負けてしまいます。
- 46 締め切りを決めないと人は動かない。 体づくりは期限を決めてこそ達成できる(期限): 知っていても、「今日」という期限で「実践」を始めなければ、その日は永遠に来ません。
★POINT(補足)
知識は「可能性」に過ぎない。実践(行動)こそが、その可能性を「現実」に変える唯一の力である。
この記事を読み終えた「今」が、あなたの「3日、3週間、3ヶ月」(46 締め切りを決めないと人は動かない。 体づくりは期限を決めてこそ達成できる)のスタートラインです。「知っている」人のままでいるか、「やっている」人になるか。ぜひ、「スモールスタート」で構いませんので、行動(Doing)を開始してください。その小さな一歩が、あなたの未来を確実に変えていきます。
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